第16話
今、俺たちはウェル城から約1.5km離れた丘の上にいる。
ここにいるのは俺の他に魔王とナターシャ、フェルト、それにスナイパー部隊が500。
あぁ、それと忘れてはならない。ここまでずっと文字通り引きずられてきたムーアだ。
引きずられてきた為、身体の至る所に出血と打撲。髪を引っ掴んで連れてきたらしく、だいぶ髪も抜けている。
コレを見て、誰が領主の娘などと気がつくだろうか?という姿になっている。
つまり、簡単に言うとちょっと死にかけている。
ウェル城と俺たちとのちょうど中間地点にはニックとアマンダ。それに編成した部隊。さらには魔王軍が旗を掲げて開戦を待っている。
魔王が俺に近寄って、真剣な顔で訊ねてきた。
「そろそろ実験とやらを教えてくれないか?」
ここまで来ると隠し立てする必要もないだろうと思い、実験について話した。
「ロストエデンの副官一人一人には『特殊能力』が存在するんだ。だけど、こちらの世界で試したことがない。使える、使えないでは今後の戦略も大きく変わってくる。それの実験さ。」
魔王はなるほどと納得し続けて訊ねる。
「それは魔法とは違うものなのか?」
俺は返事をしながら、ふと気になったことを聞いてみた。
「あぁ、おそらく全くの別物だと思う。ところで、アーガイア国で一番強いのは誰なんだ?」
魔王が誇らしげな顔をする。
あぁ、嫌な予感しかしないな…
「もちろん俺だ。接近戦も魔法も超一級だからな。」
俺はジト目で魔王を見てから
「ロリコンなのに…?
ロリコンが一番強いってお前の国大丈夫かよ。あぁ、嫌だ嫌だ。ロリコンがトップなんて俺なら死んでしまうかもしれん。」
「あんたんだきゃー言われとーないわ!!!ハァ…こんな強いところのトップがロリコンなんて…俺ならヒッソリと山の中にでも隠れ住むわ。」
ピキピキッと額に血管を浮かべ
「なんだとっ…」「なにをぉ…」とやり合っているとナターシャから声がかかる。
「敵兵が城壁から出てきましたよ。そろそろ遊びはやめてもらっていいですか?そこのロリコンども。」
フェルトもそれに続く。
「そうですよ、ロリコンども。」
俺と魔王は2人同時に倒れそうになる。
魔王が青い顔で
「あんたんとこの副官きっついなー。」
俺も青い顔で
「フェルトさん綺麗な顔して言うこときつい…」
「「ハァ…」」と2人してため息をついた。
あっちはあっちで
「もう、、、ロストエデンのトップがロリコンなんて恥ずかしいわ…」
「アーガイア国の王がロリコンだなんて…恥ずかしくてご先祖様に顔向けが…」
「「ハァ…」」と2人してため息をついていた。
魔王が気を取り直して訊ねてくる。
(こいつ立ち直るの早いな!!)
「で、あの青年の『特殊能力』は何なんだ?」
これもここまで来れば隠す必要もない。今から使うわけだしな。使えなかったらもっと隠す必要がない。
「あぁ、ニックの特殊能力は『乱爆』だ。」
「乱爆…?」
「そうだ、まぁ見た方が早い。口で説明するのは中々難しいし、面倒だからな。」
俺はニックに『乱爆』を発動させるように指示を出す。狙うは……ウェル城だ!!
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