第19話

事後処理をある程度終えた俺はロストエデンの司令官室に戻っていた。

後はフェルトさんに任せよう。



「はぁぁぁ、疲れたぁ。なんもしたくない〜だらだらしたい〜」

と大きめの独り言。


すると、

「ダメだダメだ!3日も空けていたんだから何かやることがあるだろ?」という声。


そう、魔王である。


「お前さぁ、さも当然のようにココにいるけどなんで?早く帰れ。」


しっしっとするが、魔王はめげない。


「まぁ良いではないか。ココは食事は美味い、温度も快適!あっ、ちなみにガースも来てるぞ。今はリンに会いに行っている。」


はぁと大きなため息をつき、こいつらほんとに大丈夫か?と心配になる。


「お前なぁ、全部フェルトさんに任さず自分でやれ。自分で。」


「あんたんだきゃー言われとーないわ!要塞の管理はこんぴゅー…?のレディさんに、雑務はナターシャさんに任せてるやん!」


(こいつ相変わらずツッコミうまいな。)


「持つべき者は優秀な部下だとは思わないか?シューベルト君。」


「全くその通りだな。」



2人でうんうん頷いていると、「入るぜ」と言ったのはアレクセイだ。


「例のモノ完成させといたぜ。」


俺はアレクセイに歩み寄り握手をし礼を言う。


「アレクセイ、ご苦労だったな。で、反応はどうだった?」


アレクセイが親指を立てる。

「バッチリじゃ!あの子ら夢中になって遊んどったぞ。」


「それにしても、司令官もちっちゃい子には甘いのう。まぁワシもじゃが。ガハハハ。」



そうか…アレクセイに造らせて良かったな。アレクセイに頼んでいたのは『公園』だ。

ロストエデンは要塞である為、遊び場とかそういうものが全くない。それではメイとリンの教育上良くないと思ったのだ。


(後で俺も一緒に遊んでやろう。)

楽しそうに遊んでいるメイとリンの顔が目に浮かぶ。



そんな俺のささやかな楽しみを奪う者が現れた。ナターシャだ。


「失礼します。司令官に会いたいという者が訪ねてきておりますが…」


「誰だ?」


「サーニャのルーミルと言っておりますが、お知り合いですか?」



(んん?サーニャ?ルーミル?全く知らん…よな?多分)


そこに魔王が口を出す。


「サーニャはエルフの国の名前だ。ノーザイアの西に……」


俺は魔王が最後まで言い終わらぬうちに


「エルフっ!!会おうすぐに通してくれ!」


ナターシャは了解しましたと言い、兵の一人に「お通しするように。」と命令した。



エルフ…それは憧れだ。向こうの世界ではゲームや漫画でしか存在しない。

そんなエルフがすぐ近くに!!



(いかんいかん。3分ほど妄想していた。)



魔王がまた口を挟む。


「そんなに簡単に通して良いのか?アーガイア国ならアポ無しでは会えないものだが…」


俺は興奮している為、自然と声が大きくなった。


「何を言ってるんだ!エルフだぞ!エルフ!エルフといえば白い肌、スラっとした身体!それに何より美女!!

うーん、早く来ないかな?こっちから迎えに行こうかな!?」


ワックワクしてる俺に魔王は焦って忠告する。


「待て!!ルーミルという名は……」


魔王が言いかけたとき


「失礼する。」


キターッ!!!!

と満面の笑みで振り返った俺の前にいたのは確かにエルフだ。

エルフなのだが……


(なぜおとこー!!!!)

俺の口はビックリしすぎて開きっぱなしだ。


テンションは一気に地に落ちた。


「………お帰り下さい。」

俺はエルフに一言そう告げた。

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