第10話
敵に向かってありえない速度で疾走してくる謎の部隊。その部隊は両手に武器を持ち、笑いながら敵陣を突っ切る。
謎の部隊が突っ切った後は敵がバタバタと倒れていく。
見たところ、200そこそこの部隊。だが、彼らは1人として欠けない。
「◯△×!!◇□◎……!」
何を叫んでいるのかガースには分からなかったが、先頭の女(やっと女だと視認できた)だけ心底嬉しそうに笑い、敵を屠る。
敵は一時的に混乱していたが、100名以上いるであろう魔法士部隊が呪文を唱え出す。
魔法が放たれれば200人などあっという間に消し炭になってしまう。
だが、魔法が放たれることは無かった。その前に敵の魔法士がバタバタと倒れていく。
だが、彼女らが何かをした気配は全くない。
ガースは呆気に取られ、その光景をただただ見ていることしかできなかった。
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「アマンダ様、どうやら門前に着いたようです。それと、魔法士は全員スナイパー部隊が討ち取ったとニック様から連絡がありました。」
部隊の1人がアマンダに告げる。
「もう着いちまったのかい、予定通りここから二手に別れ、敵を掃討する!久しぶりの戦闘だ、全員楽しめよ!」
アマンダ直属マシンガン部隊。
【G&G neoSP】というサブマシンガンを両手に装備している。
威力:S 連射速度:SS 貫通力:SS 命中率:S
という恐ろしい武器だ。
そして、この武器の一番恐ろしい点。
弾切れがない。つまりリロードも必要ない。
元々ゲーム内では弾薬という項目があり弾薬が無ければ戦闘でもただいるだけにしかならなかった。
それがLv17の兵に上げると弾薬の項目が消えてしまった。何かのバグかと思ったが、試しにゲーム内の俺の『サブ要塞』と戦闘させてみると、弾薬がないにもかかわらず普通に戦っていて驚いた。
アマンダの言葉を皮切りに200人が二手に分かれて走り出す。マシンガン部隊が通ったあとには敵兵の死体しか残らない。
逃げ出そうとする敵兵もいたが、走り出した瞬間に倒れていく。スナイパーによる狙撃だ。
何が起こっているのか全くわからない恐怖で敵兵は混乱していた。
それはおおよそ戦闘と呼べるものではなかった。ただただ敵が蹂躙されるだけだ。
「アマンダ様、すべて片付いたようです。逃げ出そうとした敵兵はスナイパー部隊によって処理された模様です。」
アマンダは全く息を乱さずに答える。
「もう終わりかい!?まだまだ暴れたりないねぇ。まぁ、久しぶりの戦闘で少しストレス発散にはなったかねぇ。」
戦闘後、戦場にはアマンダ直属部隊200と死体の山が残っただけだ。
彼女らは統率の取れた動きで集結し、門の前へと整列する。
そして、ただただ呆気に取られていた魔族の一人に向かってアマンダが声をかけた。
「私はロストエデン副官アマンダ・ローズ!!我らの司令官がそちらと話をしたいという。開門を求める!」
すると、数分の後崩れかけの門が開いた。
中から、先程の魔族がおそるおそる出てくる。チラッと中を見ると身を寄せあって怯えている、女子供が見えた。
魔族の一人が距離を取ったまま口を開く。
「こちらは、アーガイア国ソドン村警備隊長のガースである。
まずは、助けていただいたことに感謝したい。」
深々と頭を下げるガース。
「それで話とは?」
アマンダは頭をかき、
「あぁ、私は戦闘専門だからねぇ。もう少し待ってくれるかい?…っと来た。」
ガースが見れば、アマンダの背後から白衣に身を包んだ研究者らしい男と何か大きな筒を担いだ青年が、先程の戦場の奥から歩いてくるところだった。
2人はアマンダのところまでやって来る。白衣の男が先に口を開いた。
「ハァ、、、アマンダさん、やり過ぎですよ。せっかくの実験ざいりょ…サンプルが台無しではないですか。魔法士の杖やローブで我慢するしかなさそうですねぇ。」
続いて青年が
「アマンダ!愉しそうだったな。俺がやりたかったよ。サポートだけとは…司令官の命令だから仕方ねぇか。」
「ジョー!うるさいよ。久々の戦闘で燃えたぎったんだ、仕方ねぇだろ。それに、変に生き残ってあんたのサンプルとやらになるより一思いに
ニック、あんたはこの戦闘に反対したんだ。サポート役もらえただけでも司令官に感謝しな!
それより、ジョー。本題の方を早くしてくれないか?」
そう言われたジョーは胸元から小さな箱を取り出し、スイッチを入れた。
すると、立体映像が映し出される。
「こんにちは、俺がロストエデンの司令官、三鍵 唯人です。」
3人の副官がひそひそと
「おい、司令官の名前ってはじめて聞いたぞ…」
「私もだよ、良い名前じゃあないか。」と聞こえるが、努めて無視する。
ガースは唖然としながらも、失礼にならないように挨拶をする。
「アーガイア国ソドン村警備隊長のガースです。まずは、危ないところを助けていただき、ありがとうございました。
それで、お話というのは?」
「まずは、ロストエデンがノーザイア帝国ウェル領にあるのはご存知ですか?」
「いいえ。ロストエデンというのは?」
「要塞ですが、そうですね、わかりやすく城を思い浮かべてもらえれば。ウェル領にはありますが、ノーザイア帝国とは関係がないのです。」
ガースは頭が混乱してくる。ウェル領にあってヒト種でありながらノーザイア帝国とは関係ないと言われても到底信じることはできない。
だが、先程ノーザイアの敵兵から助けてくれたのも事実。
「それで、我々が助けなければどうなっていたかおわかりいただけてますよね?」
ガースは苦虫を噛み潰したような顔で
「……はい。」
と返事をする。どんな要求をされるのか怯えているようだ。
だが、断ろうにも先程の戦闘を見て、戦おうという意志は全く無い。
「では、報酬の件ですが。率直に言いましょう。魔族の子どもを一人ロストエデンに迎えたい。そうですね、女の子がいい。」
ガースはポカンとしてしまう。どんな無理難題をふっかけられるかと思っていただけに衝撃が大きい。
3人の副官はひそひそと、
「やっぱり司令官はそういう趣味が……」
「私も怪しいと思ってたんだよねえ。私やナターシャに手を出さないのはおかしいからねえ。」
「私はナターシャはともかく、あなたはありえないと思いますが…」
「ジョー……どういう意味かねえ?」
と聞こえる。
今度は流石に無視するわけにはいかない。俺は慌てて付け加える。
「お、お前たち大いなる勘違いをしているぞ!俺はメイの友達をだな……。」
俺は気を取り直して、
「ゴホン、それと敵兵の魔道士部隊の装備と持ち物の一部をいただきたい。研究をしたいのでね。」
ガースはずっと考えていたが、この程度の要求ならのまざるを得ない。もし、断って戦闘になれば待つのは『全滅』の二文字だけだ。
「わかりました。それで一つお願いがあるのですが、、」
「何でしょうか?」
「魔族の子どもを連れて行く時に私もついていっても?子どもを預けるのですから、この目で確かめたい。」
「ふむ、もっともですね。もちろん我々は構いません。中々、勇気のある方とお見受けします。あの、戦闘を見た後にロストエデンに来たいとは。」
ガースは笑って、
「元々はあの戦いで死ぬはずだったのです。それを思えば少し長引いただけ儲けものですよ。」
※長いので一度切ります。
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