第3話 戸惑い

 マルクは、その震える手をゆっくりと動かした。まず最初はどこに触れたらいいのか、それがマルクには分からなかった。どこを触ってもハズレな気がしてならない。

 肩か? 頬か? それとも腕か? できるだけ当たりさわりのなさそうなところを選ぼうとするが、それでも触る勇気が持てなかった。そうやってあれこれ悩んでいると、アリスはため息まじりにこう言った。

「大丈夫。私は逃げないよ。だから触って。どこでも、マルクの触りたいところを、正直に」

その言葉で、マルクの鼓動はさらに激しくなる。アリスは、相変わらずの微笑ほほえみでマルクの眼を真っ直ぐに見つめている。ここで退くわけにはいかない。マルクはその手を、まっすぐにアリスの乳房へと伸ばした。

「最初はやっぱりそこなんだね」

かすかにつぶやいたアリスの声は、もはやマルクには届いていなかった。それほどまでに、マルクは彼女の胸に夢中になっていたのだ。手を置くと、それは水着越しでも分かるほど柔らかく、弾力があり、温かかった。もちろん、マルクはこのようなことをするのは初めてであったため、しばらくはずっとそうやって胸を揉みしだいていた。


すると……

「っん!」

 急にアリスが声をらした。それに反応し、マルクはビクリとし、手を止めた。するとアリスは、紅潮こうちょうした顔で熱い息をらしながらつぶやいた。

「あ……ごめん、私も初めてだから、ちょっと……刺激が強かったかな。やっぱり恥ずかしくて……」

あれだけ誘惑ゆうわくをしてきて、余裕そうな顔をしていたアリスが、今回が初めて。この胸を触るのも、もちろんその先のことも、全部、全部。彼女にとって、自分が初めての存在なのだ…

 マルクは、自分の思考が徐々に興奮していくのが分かった。そのような安っぽい男のよこしまな感情が自分にもあったのだと自覚し、若干の後ろめたさはあったが、もうそんなことはどうでもよかった。所詮自分も馬鹿な男の一人なのだと、開き直った。

「ごめん、アリス」

「えっ?」

「全部、見せてくれ」

 そう言うとマルクは、彼女の背中に手を回し、水着の紐をするりと解いた。

 アリスの胸は支えを失い、乳房を覆っていた可愛らしい最後の布は、あっけなくがされていく。それと共に彼女の乳房は開放され、重力にしたがってこぼれるようにたわむ。しかし、その上向き張りのある美しい形は、決して崩れることはなかった。

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