002_癸/なんか凄く納得いかなねえ!

『002_癸/なんか凄く納得いかなねえ!

/2040/12/15

/DFW/RMS関連/Mセクション東南アジア支部

/調査員 武田雪見M中佐』


『狩りの成果もあり、ボー達を一等兵に階級あげるけど良いよね?』

 ムーンの報告にあたしも頷く。

「早く採取から卒業したいだろうからいいんじゃない」

『聞いて! ダーったら、『風爪』の加工にわたしを呼ばなかったのよ!』

 フラワーの言ってくる愚痴を適当に返す。

「使用データは、送って来たんだからそれで満足しなよ」

 あたしは、今度の騒動の元になったギルド『クリーンバッド』の認可破棄の手続きを行いながらその背後にいる連中の尻尾を探る。

「そう簡単に尻尾切りなんてさせないからね。完全に潰せないまでも、無視できないダメージを与えてやるんだから」

 今回の一件は、以前先生から聞いた事もある人身売買組織絡みという事もあり、ある程度の情報があった。

 日本のみならず、ここ東南アジアのみならず世界的な規模で、Mセクションの人権派が多く動いていた。

 それだけに相手もそうそう尻尾を掴ませてこなかった。

 尻尾を掴むために動くたびに妨害工作は発生して、掴めるのは、既に切り落とされた尻尾だけ。

 それが今回、先生発案の作戦をセブン兄が実行するといった完全なイレギュラーで切られる前の尻尾がつかめたのだ。

「このチャンスは、絶対に逃さない」

 あたしは、先生コネクションまで使って、必死に繋がりを消そうとしてる奴等を追い込む。

 一分一秒が勝負を分ける中、一人の上司がやってきた。

「武田M中佐、少し話があるんだが?」

 その上司の言葉にこの状況でもあたしは、応じる事にした。

「今回の日本での一件だが、あまり深く関わるべきでは、ないと思わないかね?」

「どうしてですか? PCW側の法律が届かないとDFW側で好き勝手やってる連中を取り締まることこそマリンMセクションの存在意味だと考えているのですが?」

 あたしの主張に上司が苦笑する。

「何事にも建前と言うものがある。君は、前々からもっと上を目指したいと言っていたね?」

 あたしは、素直に頷きます。

「はい。もっともっと偉くなりたいと考えています」

「私がその手助けができると言ったらどうだね?」

 上司の意味ありげな言葉に私は、満面の笑みを浮かべる。

「それは、本当に嬉しい事です。これであたしは、更に上を目指せるのですね」

「君ならわかってくれると思っていたよ。それじゃあ解っていると思うが今回の件だが……」

 上司の言葉を遮り、あたしは、先生コネクションの一人と連絡をとる。

「人身売買組織と繋がりを持つ裏切り者を確保しました。有効にお使いください」

「き、君は、何をいっているのだね!」

 立ち上がる上司に対してあたしは、はっきりといってやる。

「貴方を売って、偉くなる算段ですが解りませんでしたか?」

「私がこの支部のトップである少将と理解しての言葉かね!」

 上司、Mセクション東南アジア支部トップの少将にあたしが通告する。

「残念ですね。あたしは、特殊なコネでシュルスR大将との繋がりがあるんですよ。きっとあの御方でしたら、Mセクションの恥部である貴方を自分の政治的道具として使ってくれます」

 よろける少将。

「馬鹿な、お前みたいな小娘がどうして……」

 少将の言う通り、本来なら単なる中佐でしかないあたしが少将すら歯向かえない大将と繋がりを持てるわけがない。

 先生っていうとんでもないコネが無い限り。

「信じられないでしょうが、貴方は、この出世レースから脱落しました。今回の一件のRMS全責任は降りかかる程度で済む事をお祈りしておきます」

「待ってくれ! シュルスR大将に言ってくれ! 貴方の手駒になるからどうか今回の一件だけは、見逃してくれと!」

 少将の無駄な足掻きにあたしが冷めた視線を向ける。

「政界や財界との関係を重んじるマリンMセクションと違って、ランドRセクションは、内部権力しかきにしませんよ。貴方と繋がり人身売買で利益を得たそっちのお偉い方への配慮は、期待するだけ無駄ですよ」

 頭を抱えて蹲る少将。

 レイド絡みで表の世界の連中ともつながりの深いMセクションには、こういうクズが多い。

 だからといってRセクションにクズが少ないって訳でもない。

 研究優先で人の命を数字でしか理解できないクズだらけだ。

 塵獣狩りを主導するスカイSセクションとて、天災を起こさない様に自国の塵獣を狩るためならどんな被害が出ても気にしないってクズばかり。

 目の前で蹲っている少将を始め、RMSの上は、本当に腐っている。

 それを排除する為にももっと偉くならないとならない。

 その為の作業に戻る中、一通の電子メールが届く。

『今回のお礼としてセブンにディナーに誘われちゃった。 由美』

 顔が引きつるのが解る。

「何か凄く納得いかねえ!」

 あたしの叫び声に同僚たちが何故か又かって顔をするのは、どうしてだろう。

 やっぱり納得いかない。

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七尾の猫の干支オニギリ 鈴神楽 @suzukagura

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