第34話 大智の強さ

『やっと繋がった!雅輝!?大丈夫?』

音を通して、ミノリの言葉が伝わってくる。

「えぇ、大丈夫です。心配かけてすみません」

ミノリの音は、心の繋がりを通して編まれた魔力であり、実際は物理的に音が出ている訳ではない。

ミノリは、今までどれだけ雅輝に向かってその心を届けただろう。思考が加速しているのを感じ、同時に雅輝の危機を察知し、彼に最大限の支援をしつつも応答だけがない。そんな状況が、雅輝が苦戦を強いられている長い間ずっと続いていたのだ。

『無事なんだね!よかった・・・!』

それでもミノリは感情的になるのではなく、心よりの安堵を示す。それは同時に雅輝に残っていたわずかな不安を溶かしていった。

『でも、状況は良くないみたいだね』

「ええ、大ピンチってやつです」

『大丈夫?』

「はははっ!ミノリさん、自分で言ったことを忘れたんですか?私たちは最強なんですよね?大丈夫に決まってますよ!それに今は、一人じゃないですから」

そう言う雅輝の視線の先には、一緒に戦ってくれる心強い味方、大智がいた。雅輝は一体ずつ確実に倒していたのに対して、大智はその小さな体で大きな心機を操り、大量の悪鬼を同時に相手にしていた。


大智の一番の持ち味は遊浮王を使ったそのスピードだが、それだけで彼がSOLA最強のメンバーに入れた訳ではない。彼の強さの秘密は、遊浮王を最高速度で動かしても相手を見失わない、圧倒的な動体視力である。彼は四方を悪鬼に囲まれた状況で、遊浮王から6本のマジックアームを起動させ、それぞれを的確に動かしていた。攻撃を受け止め、払い、反撃する。素早い動きの中で見える一瞬の情報から判断し、大智は悪鬼の攻撃を適切に処理し、最低限の動きのみで次々と倒していく。このような混戦では、大智は正しく無双の強さを誇った。真一よりも先に助けに来られたのは、単純な移動速度の差があっただけではなさそうだ。

このまま大智一人に任せても悪鬼を倒しきれそうにも見えたが、雅輝はそうするわけにも行かなかった。

大地はまだ幼く、体力も雅輝や真一に比べて少なかった。そんな彼に、長く一人で戦わせるわけには行かない。


「大智さん!ありがとうございます。ですが、さっきからあなた一人で頑張りすぎです」

「えっ?雅にいは休んでていいよ?これくらい俺一人で楽勝だって!」

雅輝の問いに、大智はにっと笑って答えた。これが本音か強がりかは分からないが、少なくとも大智は戦闘を楽しんでいるようだった。

「確かにそうかもしれませんが、無理はいけません。二人で協力して一気に決めましょう!」

「一気に決めるって?どうやって?」

問い返す大智に雅輝は微笑んだ。そして自らの魔力を収束させ、黒い3本の矢を形成させた。

十二弓演武じゅうにきゅうえんぶを使います」

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