第31話 魂楽多重奏【奏】
金に煌めく森の中心。星空を映す湖のステージ。
ミノリと有栖川は、そこで二人の音楽を奏でた。ミノリの音と、有栖川の歌とが調和する。お互いにリハーサルもなし、打ち合わせもなし、完全に即興で始まったこの演奏。しかし、二人の演奏が食い違うことはなかった。もう既に、二人の心は魂結びの笛の能力で完全に繋がったのだ。お互いに何がしたくて、どうするつもりなのかがハッキリと伝わる。文字通り、心の通じ合った二人による演奏なのだ。
『アリスちゃん・・・凄い!』
その歌唱力もさることながら、ミノリは有栖川の能力の凄まじさに驚嘆した。
人は、心機を介さずに魔力を生み出すことはできない。それは神秘の力を持つ有栖川とて同じことだ。そのため、有栖川の歌がミノリの能力に直接干渉することはできない。しかし、有栖川はその歌で木々に語りかけることができる。
形あるものには魂が宿り、魂があるものには心が備わる。木の心は普段は現れることはないし、人間がそれを感じることも滅多にない。しかし、大地に根を張り、長い時を生きてきた木の持つ心は、純粋で、真っ直ぐで、強固だ。有栖川はその歌で、木々の心を呼び起こしたのだ。そして、心が目覚めたからには、ミノリは木々に自分の音を届けることができる。
ミノリの音は森全体に広がり、無数の木々の心を繋いだ。そうして出来上がった心のネットワークは、固く強く、悪鬼の歌にもかき消されない。今なら、戦っている真一たちにも、音を届けることができる。
『私たちは、SOLAで最強のチームだから!』
かつての自分の言葉を思い出す。
そうだ、最強なんだ。負けるはずがない。色々な人に迷惑をかけて、とても時間をかけてしまったけれど、もう大丈夫。・・・いや、やっと実力を発揮できる、ここからが本番なのだ。
『みんな、今までゴメン。でも、これで絶対に勝とうね!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます