第20話 これで落とせる!(フラグ)


 それから数週間の間、真一はレーナたちの神殿で稽古をつけられていた。

 自身の魔力の使い方、増やし方、その他戦うために必要な知識と技術を教え込まれた。


 真一はその恐るべき集中力とセンスでそれら全てを完璧に身に付け、自分の物としていた。もうこれ以上学ぶことはないと、真一が神殿を去ろうとした時、ノビーに呼び止められた。


「真一くん。君は十分に強くなったけど、それだけで何でも上手くいくと考えちゃいけないよ!」

真一はその言葉を「油断はするな」という意味で受け取った。

「大丈夫だよ。何が起こるか分からないのが戦いだから。油断はしないよ」

 その返事を聞いたノビーの表情は、どこか心配そうだった。真一は、それほどまでに自分のことを案じてくれているのか、とも思ったが、よく見るとその表情には若干の呆れの色が含まれていた。しかし、そんなことを気にする余裕は真一にはなかった。


 今の真一の思いはただ一つ、早くあの悪鬼を倒したい。それだけだったのだ。いや、正確には少し違う。


 早くあの悪鬼をカッコよく倒してミノリにいい所を見せたい!!


 それが真一の、ただ一つの揺るがない思いだった。真一はノビーに礼を言い、最後に会うことのできなかったレーナにもお礼を言って欲しいと伝言を頼んだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 そうして真一は現実世界に戻ってきた。神殿の中では数週間が経っていたが、レーナたちの力のおかげで、現実では数時間程度しか経っていない。レーナと戦った時は夜だったが、帰ってきた今、ようやく夜が明けたようだ。

 

 白み始めた空には、朝日を浴びて金色に輝く雲が流れており、日の光は真一を祝福しているかのように眩しく美しかった。


「うん、絶対に勝てる!」

真一はそう確信し、SOLAの基地へ向かった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 その様子をレーナたち2人は神殿から眺めていた。


「真一くん、大丈夫かな?」

「心配ない。私が鍛えんだ。あいつは強くなったよ。よっぽど油断しない限り、負けることはない」

「いや・・・心配なのはそれじゃなくて・・・」

「ん?他に何が心配なんだ?」

「真一くん・・・悪鬼を倒したらミノリちゃんが自分を好きになってくれると思ってない?」


「・・・・思ってそう・・・」

「だよね・・・神殿を出る時だって、絶対ミノリちゃんを振り向かせることしか考えてなかったんだもん!」

「・・・あいつもよくやるよな。あんなに必死になってたのも恋のせいか」

「人間の恋って、すごいんだね・・・」

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