第19話 堅牢剣の可能性

 レーナの言う通りだった。


 あの攻撃が防げなければ、悪鬼の歌を防ぐことができない。それができなければ、悪鬼には勝てない。しかし・・・


「あんな攻撃、どうやって防ぐって言うんだ!?」


 真一は怒り混じりにレーナに問いかけた。

「この堅牢剣だけじゃ防げない!防御しても剣が折れるし、折れなかったとしても、剣の太さで防ぎきれなかったエネルギーが結局当たるじゃないか!」


感情的になる真一に対して、レーナは呆れたように言った。

「はぁ?お前もしかして、自分の武器の性能も把握してないのか?」

「どういうことだ?」

「貸してみろ」


 そう言うと、レーナは真一が気づくより先に堅牢剣を奪って、説明を始めた。



「いいか、お前らの武器、あー・・・心機?だったか?ってのはな。それぞれが役割を持っていて、それを果たせるようにできている。お前の武器の役割は『守る』ことだ」

「はぁ・・・。」

「この武器は、どんな攻撃からもお前を守れる。いいか、『どんな攻撃からも』、だ」

「どんな攻撃からも?」

「ああ」


「あの悪鬼の歌からもか!?」

「当然だ」


 にわかには信じられない話だった。この女、いい加減なことを言っているだけではないのか。真一はそう考えた。しかし。今は話を聞くしかない。今の真一では手詰まりなのは確かなのだ。ここはいい加減に言った戯言でも真剣に聞いてやろうと、そう思い直し、何とか心を鎮めることができた。

 そんな真一の思考の迷いなんてお構いなく、レーナは語り続ける。


「真一、お前の剣が、それ単体で防げる防御範囲はどれだけだと思う?」

「は?」

「お前がこの剣を全く動かさなかったとして、この剣のどこからどこまでを防御に使えると思う?」

「そりゃ・・・刀身分じゃないのか?」


「不正解だ」

レーナは鼻で笑うように言った。それに対して少しイライラした真一は、ついつい声を荒げてしまう。


「なんだよ!?もっと狭いのか!?打突部じゃないと無効なのか?それとも鍔元じゃないと力が入らないのか?もったいぶらずにさっさと言えよ!」

「慌てるなって。それに、お前がそう考えたんだとしたら、今から私が言うことは、お前にとっていい知らせだ」

「何だよ?さっさと言えよ」

「お前の剣は、その刀身から、約1cm遠くまで防御できる範囲がある」

「何っ?」

「見かけより多くの範囲を守れるってことさ。お前の魔力によってな」

「僕の、魔力で・・・」


「さぁここまで言えば、お前なら次に自分が何をすべきか分かるんじゃないか?」



 真一は頭を整理し始めた。まず、レーナが言っていたことを整理する。

・堅牢剣の心機としての役割は『守る』こと

・堅牢剣はどんな攻撃からも使用者を守れる

・堅牢剣の防御範囲は刀身より僅かに広い

・その広がった分の防御範囲は、自分の魔力によってできている。

ここから真一が導き出した結論は・・・



「僕の魔力を鍛えて、さらに防御範囲を広げればいい・・・」

「正解だ」

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