第41話 東方小国群 ライクライ④

「という事でして。その村の付近の森ではもともと、強力な吸血鬼が居を構えているという話があり、そのもの、『ロッテ』と呼ばれるものが元凶ではないかと。」


 案内された部屋で、初老のナイスミドル、メドレさんという貴族の方からして頂いた話を要約すると、次のような形になります。別に、かろりー摂取の片手間で聞いていて、細部を覚えられなかった訳ではありませんよ?ええ、勿論。甘いものを食べると、頭も冴えわたりますね!


① 最近、首都からそれなりに離れたところにある村で、住民が全身の血を抜かれた状態の変死体で見つかるという事件頻発している


② 調査と対応のため、精鋭の兵士一団を派遣したが、調査途中で行方不明となり、また怪事件も未だ続いている


③ 件の村付近にある森には古来より強力な吸血鬼が棲んでいると言われており、最近目撃証言もみられるようになった


 前回同様3つに纏めてみました。手抜きではないですよ?本当ですよ?判例主義というのは、法の下の平等を実現するための手法の一つなのです。まあ、今回は唯単に前例を踏襲しただけなのですが。前例主義と判例主義とでは意味合いが異なりますね。

 ちなみに、このメドレさんという貴族の方は、どうやら魔物に関する権威でもあるようです。

 ところで、権威といわれるものは、現在・未来の成功を担保するものなのでしょうか?先祖が何らかの功績を遺したという事が、その子孫の資質、能力・成功を保証するものではないのは、歴史により繰り返し証明されてきた真実の一つかと思います。そこから類推すれば、異分野、或は過去の成功・功績等でも同じ事が言えそうです。同分野、近い過去の功績であれば、多少は考慮に値するかもしれませんが。目の前にあるものだけから将来を読むのは大変、選択の責任を負いたくないということで、そういったものを利用されているのかもしれません。


「このご時世、あまり他国を刺激する訳にもいかず……。民にも不安が広がりますし。

 そこで、是非とも優秀な冒険者であらせられます皆さまにお願い致したく!どうか、お引き受け頂けませぬか?」


 因みに、このお二人――プリメラさんとメドレさんはただならぬ深い?仲だとか。祖父が得意な結婚を前提に、とかいうあれですね。祖父は責任をとったりしませんが。親娘レベル、或はそれ以上かもしれない年の差です。時々いらっしゃいますよね、オジ(イ)サン好きの若い娘というのは。まあ、私が『若い娘』呼ばわりするのはどうなんだ、と思わないでもないのですが。


「最初お話させて頂いた時から、とても気が合いまして……。それで気づいたら頭から離れなくなってしまっておりましたわ。歳の差なんて気にならない位に。

 ……勿論、お姉さまは別腹ですけれども。」


 別腹、というところを掘り下げると危なそうなので、この話題は避けた方がよさそうです。

 『とても』年上好きや、ロリ……、は実年齢を基準に裁定されるものなのでしょうか?或は、外見を基準にするべきなのでしょうか?同じ種族同士ならば、という前提に関する論点もあり、実年齢と外見の相関が人間とは異なる種族も多々ありますので、人間と魔族、或は人間とエルフといったような異種族間の組み合わせだと中々判断が難しい事になりますよね。オロチさんのような合法ロ……、の方もいらっしゃいますし。そもそも外見が好きに変えられたら何の意味もないですしね。


 概ね皆さんの方針は決まっておりましたが、アレンさんが皆の総意を代表して、依頼をお受けする事にしました。


「俺たちでお力になれるかはまだ分かりませんが、お引き受けしましょう。」


 そんなこんなで、今回も餞別代りに多少の前金を頂いた私たちは、消耗品類を補充しつつ、件の村へと向かう事となりました。今回は銀製品だとか、建築物を固定するための道具だとかを準備しておけばよいでしょうか?疲労回復に役立つ香味野菜は臭いがちょっと……。よく加熱したり、食後に牛乳を飲んだりすれば大丈夫らしいですけど。

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