第40話 東方小国群 ライクライ③

「カンナお姉様!お会いしたかったですわ!」


 そういって、カンナさんの胸に飛び込む毛玉、ではなく小柄な少女が一人。赤みがかった髪に小動物を思わせる可愛らしい顔。まだ未成熟ながら将来性を感じさせる細長い四肢を包むのは桃色のフリフリドレス。総じて『ほわほわと』した印象を受けます。私には真似出来ない格好ですね。そして、何となく薔薇ではなく百合の花が似合いそうな感じがします。この方が、今回の依頼主であるプリメラさんでしょうか?


「こら!プリメラ!はしたない真似はよさんか!」


 玉座の主に窘められ、プリメラさんが渋々とカンナさんから離れます。


「ごめんなさい。でも、カンナお姉さまのお顔が見えたら居ても立ってもいられず、つい……。」


 若干申し訳なさそうな感も醸し出しておりますが、不満気でもあります。そこをカンナさんがフォローします。


「いえ。私は大丈夫ですわ。プリメラ王女、お久しぶりですね。お元気そうで何よりです。」


「お姉様こそ!お元気そうでとても嬉しゅうございますわ!

 ゼスタネンデでは大変だったそうで、私、とても心配致しましたわ。」


 喜んだり、膨れたり、沈んだりと表情豊かな方のようです。若干演技っぽい感がする位のオーバーリアクションです。これが、若さというものでしょうか?歳はとりたくないものですね。

 ところで、この辺一帯は前大戦時にゼスタネンデに選挙されていたという過去があります。それを考えると、プリメラさんの態度には若干違和感を覚えないでもないです。まあ、若い世代に過去の遺恨は関係ない、ということなのかもしれませんが。それを、政治的に利用されていなければ。


「ここでは何ですので、隣の部屋で詳しい話をさせて頂きますわ。美味しいスイーツも用意しておりますのよ。」


「うむ。この件はプリメラに一任しておる。また、件の魔物に詳しいものも呼んでおるので、話を聞かれるとよかろう。済まぬが頼んだぞ!」


 玉座の主にも追認され、私たちは隣の部屋でスイーツを頂く、もとい、依頼の詳細を伺う事となりました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る