第31話 万神皇国 ゼスタネンデ⑦

「ようやくか。……見張りがいるな。」


 入口の方に視線を向けると、そこから少し離れた位置に社が建てられており、兵士らしき方々の姿が見えます。


「いえ。あれは宮廷騎士たちですので、大丈夫です。私もよく知っている方々です。」


 カンナさんはそう仰ると、兵士たちに近づいていきます。

 カンナさんの姿を認めた相手方からも、今のところ敵意は感じられません。寧ろ、安堵したような、そんな感じの表情です。


「カンナ様!お疲れ様です!ご無事でなにより!都でひと悶着あられたと聞いて、心配致しました!」


 声を掛けられたカンナさんは小さく頷かれると、騎士たちに労いの言葉を返します。


「皆さんこそご苦労様です。

 こんな危険なところにお勤めなられて、さぞ窮屈な思いをされている事でしょう。申し訳ございませんわ。」


「いえ!カンナ様にご心配頂き感激であります!

 我々は大丈夫ですので、お気遣いなく!」


 どうやら、宮廷騎士たちからの人気も高そうな感じです。

 逆に、カンナさんを慕っているような人材だから、こんな危険な場所に回されているので、という可能性もありますが。ちょっとした左遷という奴でしょうか?


「中の様子は如何ですか?何か異変は?」


「いえ!あれから大きな変化はなく。

 時よりオロチ様の呻き声や暴れられる音が響いて来る位です!」


 悪化もしていないが、よくもなっていない、という事ですね。


「……そうですか。好転もしていない、という事ですね。やはり、中に入って探ってみるしかなさそうです。

 こちらの方々は私がお雇いした冒険者です。

大皇陛下やシバ首相のご許可も頂いており、洞窟内部まで同行して頂きます。」


「はっ!承知致しました!

 我々も同行させて頂きたいのですがお許しを頂けず……、申し訳ございません。

 冒険者の皆さまもお気をつけて!我々の代わりにどうか、カンナ様をお守り頂きたく!どうかお願い致します!」


 そういい、一糸乱れる動きで私たちに深々と頭を下げる宮廷騎士たち。そこからは演技の匂いはせず、心からの言葉のように思えます。


「いえ、我々も仕事ですので。

 ですが、カンナ様の事は何があってもお守り致しますので、どうかご安心下さい。」


「はっ!ありがとうございます!」


 アレンさんの言葉に敬礼で返す宮廷騎士たち。そんな彼らに見守られつつ、私たちは灼熱の洞窟内部へと足を踏み入れました。

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