第30話 万神皇国 ゼスタネンデ⑥
「……待ち伏せ、か。あからさまな感じだな。大方ヒロト大皇あたりの差し金か?」
街から離れ、霊山へと向かう街道に出て暫くしたところで、あからさまに怪しげな集団が路脇を陣取っておりました。
なんとな~く商人だか冒険者だかに仮装しておりますが、この有事にもかかわらず悠長に道端を占拠しているのはどうかと思いますね。
勿論私たちも警戒はしておりましたので、ミレニアさん指揮の下、事前に察知して見つからないように様子を窺っている状態です。こちらスネーク、セイヨクヲモテアマス?段ボールがあると尚いいですかね。ウマスギル回復アイテムはまだ必要無いですが。
「申し訳ございません。……浅慮な兄で。」
まだ確定した訳ではありませんが、カンナさんが謝罪をされます。
まあ、このタイミングで刺客を送ることが出来る、利点があるのはあの方々位だとは思いますが。
「いえ、カンナ様にせいではありませんので、お気になさらずに。
と言っても、いちいち相手にしているのもな……。それに、刺客がこれだけとも限らないし。」
アレンさんの仰る通り、襲撃が一回とは限りませんし、どんな罠があるとも知れません。このまま街道を行く、というのはあまり望ましくないですかね。
「……済みません。
そうですね。あまりやりなくは無いですが、樹海の方を通って行くのは如何でしょうか?」
街道以外の霊山周辺は深い森となっており、魔物やカミなどが多く生息しているため、刺客たちも安易に待ち伏せ等出来ないだろう、とのことです。
ただ、一方で周囲が見渡せず、方角もよく分からくなる程深いため、迷う危険性があるようです。話によると、自殺の名所にもなっているとか。社会制度の歪みがここに集まり、堆積していると。ウラメシヤ~?
「そうだな。人間と戦うよりはその方がいいか……。
道に関しては最悪精霊たちに聞く等で対応できそうだしな。」
そう言い、アレンさん、レンさんに視線を向けるクレイさん。
まあ、そうですね。そういったやり方もありますし、もしかしたら、友好的なカミに助けて頂けるかもしれません。
最悪ユ……、いえ何でもありません。ワタシニハナニモミエナイ、キコエナイ。どの道他力本願な感が否めませんが。
「そうだな!この天才の俺様に任せて――。」
「新米精霊魔術士の分際で何言ってんの!
大体、アンタ自身の力でも何でもないでしょうが!それを偉そうに言ってんじゃないわよ!
……アレン、リリシア。頼りにしているからね!」
……(合掌)。
こうして私たちは道を外れ、深い森の中へと足を踏み入れました。そして、入ってすぐに私たちは考えが甘かったことを悟ることになりました。
森は想像以上に深く、陽も差し込まないような状態で、方角もよく分かりません。
年輪とか見ればいいのでしょうかね?そんな都合よくあればいいですが。勝手に切ったりしたら、カミたちに祟られそうです。
結局、時より寄ってくる精霊たちに道を教えて頂くことで、辛うじて霊山の方へ近寄って行けている、というような有様です。慢心は身を滅ぼしますね。襟を正さないといけません。
遅遅として行程が進まない中、途中ネズミなのか、タヌキなのか、はたまたミミズクなのかよく分からない2m位の大きさの生き物とお会いしました。
何でも、どこぞの森に住んでいるお化け?だとか。一応、オロチ同様、この国に住まう八百万のカミの一柱なのでしょうかね?
とても親切な方で、中々上手く進めない私たちを見かねてか、山の麓まで案内して下さいました。ありがとうございます。
ついでに、モフモフしていいですか?その毛皮はとても心地よさそうですので。他に小さな個体もいらっしゃいましたので、そちらはお持ち帰りしたいところです。不穏な空気を察したのか、残念ながら小さな個体は近づいて来ませんでした。しょんぼり。
何でも、カンナさんはカミと契約することで、力の一部を借りたり、一時的に呼び出したりすることが出来るそうです。召喚術の一種でしょうかね?もし、この子たちと契約すれば、毎晩モフモフで安眠できそうです。今度、是非カンナさんに教えて頂きましょう。
大中小の皆さまに手を振られ、霊山へと送り出された私たちは、どうにかオロチの寝所があるという洞窟の入口へとたどり着きます。
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