第18話 学園都市 ワイズアビス⑤
黙々と歩き続け、2時間程先に進んだところで、私たちは一旦休憩をとることにしました。
「では食事の準備を致しますので、少々お待ち下さい。」
私はそう告げると、荷物の中から用意していた弁当を取り出し、箱型の魔導具を使って温めます。
この魔導具は家から持ち出してきていた便利な道具の一つで、魔力を注ぎ込むことで対象物を加熱することが出来るというものです。
旅先で暖かい食事は貴重ですので、とても重宝しております。そして、弁当が温まるまで間、他お三方には食事のための場所を準備して頂きました。
「……。何だ、その道具は?
魔力で直接対象物を温めているのか?一体どんな原理で?
というか、都市でも見たこと無い道具だぞ……。」
レンさんは私の魔導具を見て何か呟かれます。どんなに熱い視線を頂いても、これはさしあげませんけど。どきどき。
因みに、この魔導具は保有者の魔力を短い波長の波に変換し、それを対象物が含む水に当てることで振動させ、発熱させるというものです。なんとかレンジと同じ原理ですね。『レンジ』というのが何なのか存じ上げませんが。
「出来上がりました。どうぞ、召し上がって下さい。」
ちょうどいい温度になる頃には準備も完了しており、早速皆さまに弁当を振る舞います。
勿論、レン様の分もあります。流石に、一人のけ者にする程意地悪くはありませんので。いじめ、格好悪い。ダメ、ゼッタイ?
「ふ、ふん!仕方ないから食べてやるとするか!どれ!」
やっぱり、用意しない方が良かったでしょうか?
或は、ぞうきんのしぼり汁を入れるとかした方が……。ちょっと真面目に準備し過ぎましたかね。反省。
「!……、ふん、ま、まあまあだな!
まともに食べられるようなんで、安心したぞ!」
と、言いながらも弁当の中身をがっつき始めます。そんなに、お腹を空かしていたのでしょうか?
実は苦学生だったとか?ミレニアさんにもう少し手加減して巻き上げて頂いた方が良かったかもしれませんね。
もっとも、もう卒業という事なので、今更学費が払えず追い出される、というような事にはならないと思いますが。
そんなレンさんを、他のお三方は生温かい?感じの眼で見守られます。
「ごちそうさま。いつもながら美味いな!リリシアの弁当は。
そんなに時間の余裕がある訳でもないから、さっさと片づけて先へ進もうか。」
お粗末様です。
クレイさんのその言葉を皮切りに、皆さま(何と、レンさんも参加されております!)分担して片づけを進め、ほどなくして再出発となりました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます