第15話 学園都市 ワイズアビス②
「”下等な精霊魔術の使い手募集!来たれ我が研究室へ。我が大望の手助けをさせてやる。 ――大魔術士レン・クロサキ――”?なんだこれは?」
早速冒険者ギルドへと乗り込み、依頼を物色していたところ、アレンさんが変な依頼に行き当たりました。
下等呼ばわりされて、精霊魔術士さんたちが依頼を受けるとも思えませんが、この自称”大魔術士”の、レンさんという依頼主は何を考えていらっしゃるのでしょうか?特殊な性癖をお持ちの方を求めているとか?
「ああ、それか。実は卒業間近の学生からの依頼でな。
何でも、本人は精霊魔術が使えないのにもかかわらず、卒業試練として教授から精霊魔術が使えないとクリアできない課題を与えられたらしくってね。」
と、アレンさんの声が耳に入ったのか、カウンターのおじさんが補足をして下さいました。
因みに、魔術には自身の魔力をそのまま使用して使う古代語魔術・治癒魔術の他、魔力の一部を提供する代わりに精霊たちの力を借りる精霊魔術、神と呼ばれる存在に魔力と祈りを捧げることで奇蹟を現出させる神聖魔術等、色々と種類があります。
後ろ二つに関しては特に適正・資質に左右される部分が大きく、まあ要するに精霊や対象となる神との相性が良くないと使用できません。フィーリングが合う、合わない、という奴でしょうか。
「でだ、あんたらの中に精霊魔術を使える奴はいないか?
その依頼文を見て分かる通り、本人は自信過剰な上に古代語魔術以外を下に見ていて、性格や言動に問題の多い奴なのだが、それなりに優秀な学生ではあるらしくてな。
指導教授からは、どうにか助けてやってくれないかと頼まれているのだよ。
その教授とはギルドとしても懇意にしているので、無下にも出来んでだな……。」
どうやら、文面から分かる通りの問題学生のようです。
懇意、というのは要するに研究に際して、護衛やら採取やらを依頼してくれるお得意様だ、ということですかね?
それにしても、自ら無茶な課題を出しておきながら、クリアできるようさりげなくフォローをする、というのもおかしな話です。その指導教授は一体何を考えていらっしゃるのでしょうか。何か、私たちには伺いしれない、深い思慮が隠されているのかもしれません。
「一応、使えなくもないが……。」
と、アレンさんが答えます。流石は勇者様、といったところでしょうか。精霊たちにも愛されている?みたいな。
「おお!それは良かった!
依頼主を知っている奴は勿論、そんな依頼文なので、誰も受けたがらなくってな。
卒業試験の期日も迫って来ており困っていたんだ。
頼む!どうにか受けてやってくれないか?
依頼人の報酬とは別に、ギルドからも報酬の上乗せをしてやってもいい。
だから頼む!」
「いや、そう言われても……。」
逃してなるものか、という風に食い付いてきたおじさんのお願い攻勢に対して、困惑して言いどもるアレンさん。
そこで、ミレニアさんがアレンさんを押しのけて会話に加わります。
「はいはい。アレンはちょっと黙ってて!
おじさん!上乗せ、ってところ、私ともう少しお話させて貰えるかな?」
と、おじさんと報酬の交渉を始められました。流石、頼りになりますね。これぞ庶民感覚?です。
アレンさんだと世間し――、いえ、好い人過ぎて、簡単に押し切られてしまいますからね。
おじさんと話し込むミレニアさんを、アレンさんとクレイさんがあきれ顔で見守ること数分。どうやら交渉がまとまり、晴れて円満決着となったようです。
「よし!この依頼、受けるわよ!
別に精霊魔術が下等だろうと何だろうと私たちには関係ないでしょ?
相手がどんな世間知らずで失礼な奴でも、貰える金には変わりがないんだし。お金に罪は無いわよね。
おじさんと依頼主は助かる。私たちはいっぱい儲かる。皆ハッピーよね?」
そのミレニアさんの言に押し切られ、私たちは依頼を引き受ける事となりました。おじさんが若干渋い顔をしていらっしゃいましたが、見なかったことに致しましょう。
きっと三方よし?なはずです。世間様にどんなメリットがあるのかよく分かりませんが。厄介ごとに巻き込まれずに済む、という点位でしょうか。
そんな渋い交渉を終えたのち、私たちは実際に依頼主であるレンさんにお会いするべく、魔術学園へと足を運びました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます