~第二章~ 学園都市 ワイズアビス

第14話 学園都市 ワイズアビス①

「そっちに行ったわよ!しくじったらただじゃおかないからね!」


「分かっている!」


 盗賊と勇者の息の合った華麗な連携で追い込まれ、息絶える魔物。

 他の魔物たちも戦士の剣に追い散らされて逃げていき、周囲に平穏が戻りました。

 皆さんこんにちは。毎度お馴染み、勇者候補一行の記録係、リリシアです。

 シュバルツアンクにてミレニアさんを仲間に加えた私たちは一路東へと向かい、エルディアノの国境を越えて(王子が軽々しく外国へ行って大丈夫なのでしょうか?)、学園都市と呼ばれている、ワイズアビスという街の近くまで来ております。

 戦力不足を懸念されていた私たちですが、ミレニアさんを加えた事により、戦力としては数字にして1.5倍程になったと言えるでしょう。勇者+戦士+盗賊+記録係、と物理に偏ったパーティー構成ではありますが。出来れば、魔術攻撃の出来るメンバーがもう一人欲しいところです。

 そして、ミレニアさんの加入により、戦力だけでなく、常識力・経済力という観点でも増強となっております。

 仲間となられるや否や、パーティー共用の財布の紐はミレニアさんに握られることとなり、旅に必要な倹約・貯蓄といったところで、大きな改善が為されました。

 若干抵抗感はあったようですが、アレンさんとクレイさんも自分たちの感覚がずれているということは認識されていましたので、渋々ながらも権限の委譲を承認されました。これもある種のお小遣い制、と呼べるのでしょうか?


 「私がいる限り、無駄遣いは許さないからね!

 あんたたちに任せたら直ぐホイホイと金を使うんだから。

 冒険の途中で路銀が尽きて路頭に迷う情けない勇者と王子、なんて笑い話にもなんないわよ!」


 というのがミレニアさんの弁です。

 正直、そういう未来も否定はできません。お話としてはちょっと面白いかも、と思ってしまいましたが。

 そんなこんなで、途中で路銀が尽きる様な事もなく、無事にワイズアビスへと到着しました。


 「さて、と。怖い金庫番がいるとはいえ、そんなに余裕も無いので、この街でひと稼ぎしてから、先に進んだ方がいいだろうな……。」


 ミレニアさんの冷たい視線を浴びながら、クレイさんがそう呟かれます。

 本題へと移行する前に、まずはこの街の説明をさせて頂きたいと思います。

このワイズアビスという街は、私たちの居たエルディアノ王国の東にある魔導大国レヴァンティアの一都市です。

 レヴァンティアの特徴はその冠名の通り魔術研究の盛んな国であり、その中でもワイズアビスは著名な魔術学園を中心として栄えている都市です。

 周辺諸国からも魔術研究のための学生を受け入れ、皆精力的に学業、研究に勤しんでいるため、魔術研究に関しては最先端をいっている、と言っても過言ではないでしょう。

 とはいっても、実際には魔族たちが統治する北極圏国家や、この大陸から海を挟んで東にある移民合衆国は、更に進んだ魔術文明をもっていると言われていますので、この大陸では、とつけるのが正解でしょうか。

 因みに、移民合衆国には北極圏から移住してきた魔族も住んでおり、彼らがその進んだ魔術文明をもたらした、という噂ですので、実際の最先端は北極圏の魔族たち、という事になるのかもしれません。

 そんな学園都市で私たちを待ち受けていたのは――。

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