第5話 プロローグ⑤

 それから2、3日後。私は村の出入り口近くに、アレンさん、クレイさんとおりました。

 お二人はフル装備で、まさに“冒険者”といったいでたちですが、私は普段とさほど変わりません。夢ではなく、実用品その他もろもろを詰め込んだ大き目のリュックを背負っている位ですね。

 大がかりな医療器具などは入っておりませんが、旅で役立ちそうな薬類・道具と、着替え類、そして少量の本などが入っております。

 家にはとりあえず書置きだけしておきました。「旅に出ます。探さないで下さい。」……これだけ見ると家出のような感じですが、実際似たようなものでしょうか。閑散とした村の生活に耐えられず、町を夢見て家を飛び出す青少年、とか。青春ですね。

 村長さんにも説明をお願いしておきましたので、きっと大丈夫でしょう。可愛い孫には旅をさせろ、といいますし。お爺さまならきっと察して下さることでしょう。


 「それでは準備はいいかな?これから宜しく頼むよ。」


「……はい。これからお世話になります。不束者ですが、宜しくお願い致します。

 アレン様、クレイ様。」


 問いかけにそう答える私に、クレイさんは苦笑いしながら首を横に振ります。


「ははは。何か嫁入りするみたいな言い草だな……。

 二人に対してだと色々問題なので、俺だけにしてくれると嬉しいかな。

 とりあえず、今からは“冒険者仲間”、という訳だから“様”はいらないよ。敬語も気にしなくていい。

 こちらも……、リリシア、でいいかい?これから、よろしくな、リリシア。」


「……よろしく、アレン、クレイ。」


 ちょっと躊躇いが残りましたが、そう答える私に二人は大きく頷きました。


「あと、リリシアの役割だが……、とりあえず戦闘には参加しなくていい。

 戦闘中は横で見ていて、危なそうだったら逃げてくれて構わない。傷の手当てなんかは、適宜してくれるとありがたいかな。

 後は……、そうだな“記録係”というのはどうだろうか?

 俺たちが冒険者として活躍していくのを記録して残してもらう、って訳だ。冒険者として活躍して、名声を得たい俺たちにはぴったりだろう。うん、それでいこう!」


 何だかよく分からないですが、私の役割は“記録係”に決まったようです。

 まあ、戦闘をしろ、と言われても困りますし、もしや“荷物持ち”にでもされるのでは、と思っていたところでしたので、いいのですが。名声を得るのに、近場でみている記録係が必要とも思えませんが。執筆でもしろ、ということなのでしょうか?


「それじゃ、宜しく!リリシア。とりあえず近くの町を目指すとしよう!」


 そうアレンさんただされて、私の“勇者一行の記録係”としての旅は始まったのでした。

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