第22話もうっ!

 ジルさんとアミィ嬢が仲良く(?)どこかへ行ってしまい私と王女様がぽつんと残されたわけですが、王女様とは無事お友達になり楽しいお茶会を過ごしました。


「メルローズ様、本日はとても楽しかったです」


「わたくしもすごく楽しかったわ!ロティーナ様はわたくしの知らない事をなんでも知っているのね!」


「そう言って頂けると嬉しいです。私は勉強しか取り柄がないので……」


「何言ってるの、ロティーナ様の知識はすごいわ!それに比べてわたくしは……。わたくしもロティーナ様を見習ってもっと勉強しようと思うの!ロティーナ様を見てたら家庭教師に変に反発していた自分が恥ずかしくなってきたもの」


「メルローズ様……」


 こうして私とメルローズ王女様の友情が育まれたのでした。


 結局アミィ嬢に近づいて探りを入れるのは出来ませんでしたが、メルローズ様が噂とは違い本当はちょっと反抗期を拗らせただけの少女だとわかっただけでもよかったかもしれません。ちゃんと話してみればあの国王の娘とは思えないくらいの方でしたから。この王女様ならこの国の未来も今よりもずっと良くなる気がします。






 そしてお茶会も終わりの時間を迎えた頃、やっとジルさんが戻ってきました。……ひとりで。


「やぁ、お待たせしたかな?」


 にこにこと笑顔を振り撒きながらやって来たジルさんからはアミィ嬢がつけていた香水と同じ香りがしました。


 まさかとは思いますが、ジルさんもアミィ嬢の魔の手に堕ちてしまったなんてことないですよね?


「ロティーナ様、異国へ行く前にもう1度会って下さいね!約束よ!」


「ええ、必ず」


 メルローズ様と手を取り合い次の約束を交わし、偽の聖女とバレることなく王城を後にしたのですが……。










 ***








「それで、結局何をしてたんですか?」


 帰宅後、ジルさんを尋問することにしました。


「ん?もしかしてヤキモチ?「箒で叩きますよ」じょーだん!冗談だって」


 そう言って懐から小瓶を出して私に見せてきたのです。


を取り返してきたんだ。ロティーナのおかげですんなり近づけたし助かったよ」


「それは……香水ですか?なんでそんなものを」


「まぁ、これは媚薬みたいなもんかな?異国でとある薬の研究開発中に偶然出来た物なんだけど、麻薬成分が検出された上にその効果がえげつないとわかってね。処分しようにも水や土に混ざっちゃいけないし、人間の肌の上でゆっくり蒸発させるしかないわけ。でもその人間の体臭と混ざると相性によってはさらに大変になるってなったから厳重に鍵をかけて劇物として保管されてたんだ。けど、それが盗まれて大騒動だよ。しかも盗まれたなんて知られたら異国にも大ダメージ確定なわけで、秘密裏に探して探して……隣国での断罪劇からアミィ嬢に目をつけたわけ」


 どうやらアミィ嬢はとんでもない品物を使っていたようです。


「なぜアミィ嬢がそんなものを入手していたかについては……聞かない方が良さそうですね「うん、国家機密~」では、これだけは聞かせてください」


 入手ルートが国家機密ならそんな危険な香水が存在することも国家機密なのでは?とも思いましたが、それよりも気になることがあります。


「聖女騒ぎからずーっと“異国”関連ばかりですけど、ジルさんは隣国のスパイだったのではないんですか?」


「……あ」


 あからさまに「やべっ」って顔をしてますが、もう誤魔化されませんからね!


「もしかして嘘を「あ、そうだ!また頼みがあるんだけどそのアミィ嬢に面会したいって手紙出してくれない?」へ?」


「ほら、お茶会ではちゃんとお話が出来ませんでしたから~とかなんとか書いて公爵家に遊びに行きたいって言えば食いついてくるから。あ、ちゃんと“大使”も連れていくって書きなよ?日程は3日後にしよう。反動が現れて実感する頃だからさ」


「あ、あの、だから何をさせるつもりなんですか!」


 早口でそう言い、紙とペンを渡してくるジルさんに抗議をするといつものにんまり顔を見せて「メインディッシュの下準備だよ」とだけ言って肝心なことは何も教えてくれないのでした。


 もうっ!いっつもこうなんだから!


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