事故物件

バブみ道日丿宮組

お題:うわ・・・私の年収、友人 制限時間:15分

事故物件

 住む家が一瞬にして消滅したという例え方はおかしな話だけど、私が一家心中になりそうになったといえばなんとなくわかってくれるかもしれない。

 家である屋敷では首をつった両親たちと家政婦さんとともに燃えてなくなってしまったし、更地になった敷地を売地にしても事故物件として、あまり価値がないらしく不動産が毎度唸り声をあげてた。

 私の実家は駅から歩いて五分、庭のあるお屋敷で結構な広さだったから、条件次第じゃ数倍にもなるとのことを不動産はいう。

 一番はマンションを建てるのが理想だけど、そこに人が住むかまでは別問題で……損得勘定がいつ収まるのかも未知数。ギャンブルに近いって笑ってた。

 私的には笑い事じゃなかったんだけど、そこは友人のおかげでなんとかなった。

「こんなに借りてもいいの?」

「別に渡した額は3ヶ月分の給料だし、小学校からの付き合いじゃん?」

 保証人として、お金の前払い人として私の相談に乗ってくれてたりはしたんだけど、

「返せるかもわからないんだよ?」

「うーん、気にしなくてもいいよ。あたしが一番困ってくれた時かばって怪我までしてくれたのはあんたじゃない? こんな時じゃなきゃあたしは恩を返せないよ」

 友人の年収の高さは知ってるし、今は同棲させてもらってる身だけど……本当にいいのだろうか。

「あとはそうね、ここよりいい物件にしてあたしの家賃をただにしてもらうことが条件かな」

「そ、そのくらいあたりまえじゃない!?」

 友人のあまりの要求欲のなさに声が裏返った。

「ここ、築3年だけどあまりパッとしないデザインなんだよね」

 そういって友人はいつ買ってたのか、マンションの資料を私に見せびらかしてく。

「こういう機能があったり、デザインも良ければ女性受けもいいよ。あんたがいってる不動産は役に立たないからあたしが紹介してあげる。というか保証人だから一緒にいかないとね」

 友人はそう言いながら、どこかへと電話した。

「よし、会社しばらく休めることになったから、あたしたちの新天地を作ろう!」

「えぇ、だ、大丈夫なの!? た、確かプロジェクトリーダーだよね?」

「リーダーがいなきゃできない仕事場があるんだったら、そこは間違いなくクソね。仕事ができない会社といっても過言じゃないわ」

 さすが大手に勤めてるだけあって、威厳ある……。

「事故物件とはいってもさ、所詮そのくらいなんだっていうの? そういうマニアもいるし、何より大都市の中心地。これ以上ない商売よ。成功したら、あなた住んでるだけで大金持ち」

 あははと笑う友人はまるで自分のようにとても楽しそう。

「というわけで、これからよろしくね?」

「う、うん、よろしくおねがいします」

 こうして私は友人と握手をして、今後の未来を話すはじめを開始した。

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事故物件 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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