第28話 道標ない旅-28
五十六は一瞬ぞくりとした。そして、一歩引くんだ、罠の奥まで入るまでは近づいちゃだめだと、自分に言い聞かせながら書き進めた。
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おれがこの学校に入ったのは、
わりと近かったっていうのが理由のひとつ。
家から一番近い上岡中は、マンモス校で、
学校が荒れてるっていう噂があったから、他へ行けたらって思ってた。
学費が普通の私立よりずっと安いから親も文句言わなかったし。
受けてみたら受かったし。
あと、もうひとつ。
変な学校だって聞いたから。
どう変かって言われてもよくわかんないんだけど、
ただの進学校じゃないってこと。
でも、実際、入ってみたら、
成績は張り出されるわ、
補習は多いわ、
みんな頭はいいわ、
ただの進学校じゃねえかって思ったこともあったけど、
由起子先生みたいな先生もいるしね。
前にも言ったけど、
野球部のイチローや新聞部の中川なんてのが、野放しになってるなんて、
驚いちゃうね。
ほとんど無法地帯じゃない?
そう思わない?
山本五十六
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五十六さん、
学校が楽しそうでいいですね。
わたしは、学校が嫌い。
家も嫌い。
わたしは、勉強が苦手だし、数学なんて見たくもない。
家でも、トロいからよく叱られます。
好き嫌いも多いから、ちっちゃいんだって、叱られます。
ずっと、
夢を見ていたいです。
ずっと、
ベルたちと冒険していたいです。
大人になりたいと思いません。
小学校の頃、もっと前でもいいから、戻りたいといつも思ってます。
わたし、どうしたらいいんでしょうね。
ベルに助けてもらいたい。
ドリフレ
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五十六はやばいと思って手が動かなくなった。
誘導尋問に入る前に、この子を追い詰めてしまった。どうする?
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ドリフレちゃんへ
随分悩みがたくさんあるみたいだけど、
おれからひと言。
ファンタジーは、たくさんの子供や大人に夢や希望を与えます。
おれだって、小さいころは昔話が大好きだった。
きっと今の子供たちも好きなんだ。
きっと将来生まれてくる子供たちも好きなんだ。
ドリフレちゃんには、その才能があるじゃない。
勉強は、そのための勉強だと思えばいいと思うよ。
アーサー王がどんなだったか、とか、
マリーアントワネットがどんなだったとか、
やっぱり勉強しなきゃわかんないじゃない?
平安京時代の事でも、勉強しないとわかんないじゃない。
数学なんて、おれだって嫌だ。
勉強は、好きなのを徹底的にやって、
あとはテキトーに、ってのがおれのポリシー。
変かな?
山本五十六
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五十六さん、ありがとう。
本当にいい人ですね。
わたしは、本はたくさん読むんです。
国語も好きです。
でも、ママが怒るんです。数学の成績が悪いって。
わたしもベルや五十六さんみたいになれればいいのに。
ドリフレ
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ハッハッハ。ハハのハ。
ドリフレちゃん、そいつは大変だ。
ベルみたいになるのはいいけど、
おれみたいになったら、だめだよ。
チビでスケベで、いいとこなしなんだから。
な、わかる?
山本五十六
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五十六さん、そんなこと言わないでください。
五十六さんはいい人です。
ベルは、わたしが作った空想の動物です。
魔法も知ってます。いろんな乗り物に乗れます。
でも、夢のなかだけなの。
五十六さんは、夢の生き物じゃないのに、すてきです。
ドリフレ
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