第19話 道標ない旅-19

 健太郎にパーティのヘルプを頼むと、案外快く承諾してくれた。ただし、本人は渋々だと言い張ってはいた。健太郎は、翔にも助けを求めた。翔も、早樹が去ったことを知って、手伝ってもいいと言ってくれた。そして元のメンバーが揃った時、改めて例のドリフレの件について説明した。


「じゃあ、今回のパーティは、その女の子相手だけなんだな」健太郎

「そのつもり」五十六

「他には告知してないんだな」健太郎

「そう」五十六

「でも、ホームページには載せてないんだろ」健太郎

「まぁ、裏ページだから。結局、こないだもこっちからメールで直接アナウンスしただけだったし、チャットページのついてるホームページも直前に組み込んだし、状況は一緒だ」五十六


「でも、五十六。その子専用でやるのは、無理だろう」翔

「いや、翔。ひとついい手があるぞ。あのな、五十六、とりあえず、その子が一番最初にアクセスして来たときだけなんだけどな、他のハンドルネームを俺たちで占領してしまうんだ。それで、疑似のやりとりを俺らでやって、五十六がその子の相手をするってのはどうだ」健太郎

「こっちで、四回線プラス三回線か。ひとつの手だな」五十六

「その子がアクセスしてきたら、翔にすぐに三つアセスしてもらうの。どう?」健太郎

「ひとりじゃ無理よ。あたしたちも二台ずつコンピューター用意しておいて、それで、すぐにアクセスするってしておいたら」美弥

「そうだなぁ。ただし、他の誰かがアクセスしてきたら、彼女は逃げちまうかもしれない。俺たちだって、その子は知らないんだから」健太郎

「それは、ある」五十六

「でも、一度でも、アクセスしてもらうことが目的なんですよね。先輩」由貴子

「そう。そうすりゃ、後は、メールでの話題が増えるから、色々聞き出せる可能性もあるってことさね」五十六

「じゃあ、これで行こう」健太郎

「でも、誰かが先にアクセスしてきたら?」翔

「そのときは、もう普通にやってしまおう。それで、その子には、後でメールで意見を求めるふりをして、アプローチするってことで」五十六

「どっちにしても、肝心なのはアフターケアだ」健太郎

「そう、その通り!諸君、健闘を祈る。ドッカーン!驚かない?」五十六

 五十六の問い掛けにみんな頷いた。「驚かない」


 五十六がいじけてると、健太郎が言った。

「あのさ、俺ちょっと聞いた話なんだけど、新聞部の中川、あいつ、いろんな個人情報も持ってるらしいんだ。一回、訊いてみたらどうだろう。たとえば、登校拒否の生徒はいないか、まぁ、この子が学校に来てるんなら、休みがちな子はいないか、とか」健太郎

「もう少し情報があれば、おれもそうするさ。もし、今頼んだら、調査費をぼられるのは目に見えてるからな」五十六

「そうか、それもあるんだな」健太郎

「とりあえず、土曜日。頑張ろう」翔

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