第16話 道標ない旅-16

 「ところで、チャットは人数さえ確保できればすぐにでもできるからいいとして、例のあの子の件なんだが、いいかな?」五十六

「あ、来てたの?あたしが見たときにはなかったけど」美弥

「当然、人目に触れないように、朝ファイルに落としておいたよ。まぁ、見てくれ」五十六

五十六が操作すると、ヌード画像が画面一杯に広がった。由貴子の叫び声とバチンという音が視聴覚室に響いた。

「間違えただけだろぅ。おー痛ぇ」五十六

「あんたね、なによ、これ、“.doc”ファイルだと思ったら、カモフラージュしてたわね」美弥

「そんなこと、みんなやってるよ」五十六

「あんたたちのファイル全部消すわよ!まったく」美弥

「ほんとに、こういうのはちゃんとクラウドにしまってあるんだけど、これはたまたまなんだ。ほら、これ、これが今朝開いたメール」五十六

美弥と由貴子がモニターを覗いた。五十六は、さぁどうする、と言いながら二人の反応を見ていた。


「これ……、どうしたらいいの」美弥

「なんか、答えようがない…」由貴子

「まぁまぁ、二人とも、そんなに深刻にならなくても、大丈夫。ここにちゃんと、『五十六さんが友達のように思えます。』とあるじゃないか」五十六

「今度会いましょう、とでも送るの?」美弥

「いやいや、それは警戒される。でも、メールを送っても、嫌がられる可能性は少ないってことだ。友達だからな」五十六

「でも、これ…どう応えるの?」美弥

「あの……あたし、思ったんですけど、これって、なんか、ぬいぐるみみたいなモデルがあるんじゃないかなって思うんです。ほら、デフォルメしてると、ネコだかイヌだかわかんないのってよくあるじゃないですか。そんなものじゃないかなって」由貴子

「アニメやマンガかもね」美弥

「そのへんから、攻めてみるとか?」由貴子

「んー、話が見えないんだよな。ちょこっと、訊いてみるか」五十六

「どう?」美弥

「このへんから」五十六


*――*――*――*――*――*――*――*――*――*――*――*


 ドリフレさんへ


  お返事、ありがとう!


 僕のほうでも、ドリフレちゃん(なれなれしいかな)が、

  友達みたいです。


 ところで、先生、質問!

>わたしの友達は、ベルといいます。

 > 遠い星から来た、

 > ネコのようなキツネのようなリスのようなイヌのような、

 > そんな生き物です。

 >でも、ちゃんと人間の言葉も話せます。

 > わたしやリリィがピンチになると、

 > 必ず助けてくれます。

 > 魔法のステッキを持っているのです。

 > とっても頼りになるんです。


 1.ベルって、どんなの?

   添付で絵でも送って!


 2.リリィってだれ?

   その子もドリフレちゃんと友達なの?


 > とっても、カッコイイんですよ。

 > 五十六さんとどっちがカッコイイかな?

 たぶん、ベルでしょう。

  私は、カッコイイのは名前だけです。


 それと、インフォメーション!

  次のチャットパーティを来週土曜日1:30~2:30で行います。

時間が短いっていう苦情も多かったけど、

あいにく少人数ですから、ご容赦願います。


 また、お返事ちょうだい、ね。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 緑ヶ丘学園2年B組

 コンピューター研究会会長

 山本五十六                               


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