第10話 道標ない旅-10

 土曜日の午後、一時過ぎ。チャットパーティの時間が迫ってきた。一時半に五十六が、開会の挨拶を送る。それで開始。たった一時間にどれだけのアクセスがあるか、どれだけ答えられることができるか、それに成否が掛かっている。


 いつになく緊張した雰囲気の中で、担当者は必死でマニュアルを記憶していた。学校の雰囲気やクラブ活動、先生のキャラクター、そんなありきたりの質問にはマニュアルに則って返信することにしていた。それ以外の質問が難しい。場合によっては、翔と早樹に校内を走ってもらって、訊いてきてもらわないといけなくなる。全員の連携も大切だとわかっていたが、みんな自分のことで手一杯になってしまいそうだった。


 緊張をほぐすかのように、五十六が大きく伸びをした。

「さぁ、みんな、そろそろ、スタンバイして。五分前だ」五十六

みんなそれぞれコンピューターの前に座って、スイッチを入れホームページを開いた。チャットページへアクセスすると、問題なく画面が開いた。と、文章が見えた。


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 (1.TARO)誰かいますか?>ALL


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「もう来てるよ」健太郎

「OK。だけど、待ってあと三分」美弥

「ほんとに来るんだぁ」早樹


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 (1.TARO)誰かいますか?>ALL

 (1.TARO)誰もいないの?>ALL


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「あっまた出た」健太郎

「せっかちなヤツだな」五十六


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 (1.TARO)誰かいますか?>ALL

 (1.TARO)誰もいないの?>ALL

 (2.MIYATYU)もう始まってるんですか?>ALL


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「やったぁ、2件もアクセスしてきた」翔

「これ、宮本中学の人ですよ、きっと」由貴子

「さぁ、そろそろ、スタンバイだ。行くぞ」五十六


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 (1.TARO)誰かいますか?>ALL

 (1.TARO)誰もいないの?>ALL

 (2.MIYATYU)もう始まってるんですか?>ALL

 (5.56)ようこそ、緑ヶ丘学園ホームページへ>ALL

 (6.ミヤ)ようこそ、緑ヶ丘学園へ>ALL

 (7.けんた)いらっしゃ~い、みなさん>ALL

 (8.YUKKO)ようこそ、緑ヶ丘学園へ>ALL


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「おい、健太郎、ちゃんと緑ヶ丘学園のひとりだとわかるように書け」五十六

「いらっしゃい、って書いてあるからわかるだろ」健太郎

「手を抜かないの」美弥


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 (1.TARO)はじめまして、泉央高校のTAROといいます>ミヤ


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「こいつ、女の子狙いだな」翔

「とりあえず返事書いて、美弥ちゃん」五十六


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 (2.MIYATYU)お久しぶりです。宮本中学コンピューター部です。ご案内

  いただきありがとうございます。遊びにきました。>ALL


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「五十六、俺が対応してもいいか」健太郎

「おう、頼む」五十六


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 (7.けんた)ようこそ。お待ちしてました、宮本中学のみなさん。私が、けんたで

  す。何か質問がありましたら、どうぞ>MIYATYU

 (6.ミヤ)ようこそ。ミヤです。質問があればどうぞ>TARO


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「OK、美弥ちゃん、とりあえず様子見て、おかしなヤツだったら、相手にしなくてもいいから」五十六

「わかってるわ」美弥


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 (1.TARO)緑ヶ丘はうちの高校からそんなに遠くないですけど、頭のいい子の学校

  という印象があるんですが、実際はどんなのです?>ミヤ


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「まともな、質問じゃない」早樹

「美弥ちゃん、マニュアル通りに対応して」五十六

「はい」美弥


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 (2.MIYATYU) 緑ヶ丘学園は全体で700人くらいだとありましたが、小さいですね。

  私たちの学校は、1000人近くいます。行事とか小さくて盛り上がらないんじゃ

  ないですか?>けんた


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「これなら答えられるな」健太郎

「よけいなことまで書くなよ」五十六

「中川のことはだめか?」健太郎

「説明が長くなる。やめとけ」五十六


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 (3.ボブ) お邪魔します。寺山台中学代表のボブです。>ALL


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「また、ひとり入ったよ」美弥

「ユッコ、頼む」五十六

「はい」由貴子


 慌ただしく一時間が経ってチャットの終了時間がやってきた。


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 (5.56)みなさん。お別れの時間です。少ししかお話できませんでしたが、

  また近々やります。その時にもまた参加してください。メールでご意見

  も欲しいな~。それでは、さようなら~~>ALL

 (6.ミヤ)さようなら>ALL

 (7.けんた)メールちょうだい!>ALL

 (8.YUKKO)さようなら~~>ALL


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