第9話 道標ない旅-9
これまでにメールを送ってくれた学校や人たちにチャット開設の案内を送った後、五十六は由貴子を呼んだ。
「なんですか?」由貴子
「あの、例の女の子。なんか言ってきた?」五十六
「いえ、別に」由貴子
「そうか」五十六
「なにか?」由貴子
「気になるんだ、ちょっとね」五十六
「おい、五十六」横にいた健太郎が話に入ってきた。「まさか、ハッカーじゃないだろうな。女の子を装って、本当はハッカーとか」健太郎
「それはないだろう」五十六
「でも、断定はできないだろ」健太郎
「そんなことは、どうでもいいんだ。問題は別のとこにある」五十六
「どこだ?」健太郎
「まぁいいさ。返事が来るまで待つか。さぁ、みんな、これで準備ができた。予定より一週間も早く仕上がったのは、みんなの頑張りのおかげだと礼を言わせてもらおう。しかし、今週の土曜日、本番だ。ここが、一番大事だ。基本的な返答はマニュアル化してある。これは問題ない。それ以外の対応は、ここに書いたように、美弥、五十六、健太郎、由貴子の順に対応する。翔と早樹は、アシスタントな」五十六
「はーい」早樹&その他
解散の前に、由貴子が五十六に話し掛けた。
「あの、五十六先輩」由貴子
「なに?」五十六
「さっきの女の子のことだけど、気になるんなら、メール送ってみたらどうですか?メールアドレスはわかるし」由貴子
「いいんだ。たぶん、あの子はチャットを見てる。とりあえずは、それでいい」五十六
「……あのぉ。訊いてもいいですか?」由貴子
「なにを」五十六
「なにが、気になるんですか?」由貴子
「…影だ」五十六
「え?」由貴子
「影。あの子の文章の裏に隠れている影が気になる」五十六
「影…ですか?」由貴子
「あの子は家のコンピューターを使ってアクセスしてきてる。だけど、交流を広げたいとか知見を広めたいとか、そんなじゃない。もし、そうならちゃんと自分の名前も記しているはずだ。あの子は影にいて、自分を見せないように声を掛けてきてる。それが、気になる」五十六
「…引きこもり…とか」由貴子
「…ん、まぁ、ちょっと気になるだけなんだ」五十六
「そう、ですか…」由貴子
「まぁ、それより、土曜日頼むよ。マニュアルはちゃんと記憶しておいてね」五十六
「…はい」由貴子
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます