第2話 道標ない旅-2

 次の瞬間、バチンという音が部屋中に響き渡った。

「おー痛ぇ。ひっぱたかなくてもいいじゃない」五十六

「もう一回、ひっぱたくわよ」美弥

 ぶちぶち文句たれている五十六の後ろに健太郎は回って、

「言い過ぎだよ」と囁いた。

「いい、前から言ってるけど、猥褻画像へのアクセスは禁止よ。そんなことがやりたかったら、家へ帰ってやりなさい」美弥

「家じゃできねぇから、ここでやってるんじゃねぇか、なぁ」五十六

 同意を求められた健太郎は美弥の顔色を伺って応えなかった。

「大体、あんたたちがそんなことばっかりやってるから、コン研はおかしな噂が立つのよ。スケベクラブだって」美弥

「美弥ちゃん、嫌いなの?」五十六

「なにが?」という美弥の質問に、五十六はニャッと笑いながら画面を指さした。また、バチンという音が響いた。


 「いいこと、インターネットを使うことには、先生の許可ももらってるし、構いません。でも、猥褻画像は禁止!いいこと」美弥

「へーい」五十六

「返事だけはいいんだから」美弥

「へーい」五十六

「またぶつわよ」美弥

「謹んでご遠慮いたします」と五十六は頭を下げた。

 美弥は呆れた顔で扉の方に向かって言った。

「ほんとに、そんな事ばっかりしてるから、ユッコも入れなくて困ってるのよ、ね」美弥

扉の影から清水由貴子が顔を見せた。

「なんだ、ユッコ。来てたの」五十六

「あんたたちがそんなことしてるから、入れなかったのよ。廊下にずっといたって言ってるわよ」美弥

「なんだ、気にすることないのに。今度から、一緒に見よう」五十六

また五十六が殴られた。

「禁止!って言ったとこでしょ!」美弥

「顔はやめて、あたし女優なの」五十六

「うるさい!」美弥

「だけどよ、美弥」急に取り澄ました顔で五十六は話し出した。「おれが会長だよ。おれが、一番偉いはずなのに、どうして美弥が取り仕切るんだ」五十六

「会長ったって、言い出しっぺってだけじゃない。コンピューター研究会を作りたいからって。巻き込まれたあたしまで、変態視されてるなんて、あたしの立場も考えてね」美弥

「嫌ならやめてもいいよ」五十六

「あら、そう?でも、会員5人以上いないと、研究会は取り潰しよ。活動できなくなるわよ」美弥

「美弥ちゃん、やめないで~」五十六

「コロコロかわるな!」美弥

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