結婚した相手のこと

お題：ぐふふ、夫 制限時間：15分

結婚した相手のこと

　夫が夜に徘徊してることは知ってる。

　僕が眠りにつくと判断すると、すぐにベッドから一人勝手に抜け出すんだ。

　で、何をしてるかというと、居間でAV鑑賞。

　全く僕という存在では飽き足らず、欲求をそこで満たすとはなんていう男なんだ。

　問い詰めて性癖をばらしてやろうかと思ったが、眠る前に見せた僕の羞恥で黙らせられそうで今のところは……観察しておく以外にない。

　夫がどんな趣味を持ってるかはもう知ってるも何も体験させられてるから、見なくても良いし見たくない。

「……」

　だが、AVのパッケージの女性はどれもこれも僕と正反対の体つきだ！　腹立たしいことだね！　栄養の偏りはあったがこれでも成長したほうなんだよ！　

　全く、どこを見てるかわからなくなるね！

　ほんと……なんで僕なんかと結婚したんだいと、怒鳴り声を撒き散らしたいよ。耳に齧りつくおまけつきでね。

　今日も夫のベッドルームからの離脱を確認して、静かに眠る。

　朝、夫が出社するのを見送り大学の授業が始まるまでの時間掃除をするーーそれが日課。

　夫がAV鑑賞してるのはわかってるのに、例の行為に使った物体が見つからない。七不思議のようにおかしい事態だ。

　AVは簡単に出てくるのに使用済みの『ティッシュ』はどこに消えたのか？

　まさか自分で飲むことはないだろう。飲まされることはあってもあいつが飲むわけがない。人が絶頂してるのにも関わらず、追撃してくるどエスクソ野郎だからね。

　あとは特有な匂いの残滓も残ってない。

　家にあるファブリーズ関係の残量を調べても減ってない。

　となると、見てるだけで何もしてないという結論に至るしかない。

　そうしてーー夫が行為に及んだあと見るAV鑑賞の謎は深まるばかりだ。

　何のために見るのか。

　友だちにAVを見せられたことがあるが僕は数分持たなかった。恥ずかしすぎてその場にいられなくなった。

　だからこそ、パッケージを見るだけしかできない。

　たびたび行為の幅が増えてるのはもしかしてこの中身のせいなのか。怪しいコスプレ衣装が増えるのはこのいかがわしい中身のせいなのか。

　見ることはできないけれど、友だちに聞くことはできる。

　僕は1つずつパッケージの名前をスマホに打ち込んでメモした。

　そして友だちに聞いてみると、僕がされた行為がまさにAVの中身通りで膝が震えた。

　更なる恐怖は、このパッケージはシリーズものでありもっと過激になるということだ。

　あぁ、僕はどうして結婚して待ったんだと、講義をまともに聞けなかった。