第27話 瞬きもせず-最終話

「妹?探してる妹さんに似てる?」

「んん。まゆみとは違うよ。でも、それとは違う親近感があるな」

「そう」

「そう。あそこに住んでると、しのぶちゃんやミキちゃんとも、そんな感じだな」

「いいお兄さん役やってるのね」

「ん。そう、僕にとってもいいんだ。お兄ちゃんは、バカなことできないからね、自制するのにちょうどいいよ、あそこでの共同生活は」

「まだ、暴れたいと思う事あるの?」

「ないよ。でも、もう、バカなことはできない。チーコにも恥ずかしいし、朝夢見やミキやしのぶの前でも、いい兄貴でいたい。それが、まゆみに会うまでのリハビリだと思ってる」

「いいことね」

「ん。いいよ、ここは。みんな、いいやつだ」

「そうね、みんな、いい子ばかり」

「先生、なんか寂しそうだね」

「あたしが?……そうかもしれない」

「どうして?」

「んー、よくわからない。あたしも、歳をとったのかな、って、そんな風に思っているだけ」

「え?」

「あんなに小さかった直樹君が、甲子園を目指してて人気者になって、あんなに可愛かった由理子ちゃんがお姉さん役で悩み相談を引き受けている」

「みんな、大きくなったんだね」

「そう、みんな、悩んで、苦しんで、泣いて、笑って、一生懸命に、大きくなっている」

「よかったね」

「え?」

「よかったんだろ?」

「ぅん。そうね…、よかったのね」

「楽しいね」

「うん、楽しいわ」

「みんな、楽しんでる」

「そうよ、みんな、一生懸命、生きてる」

「うん」

 風が雲を追い立てる。夕陽を覆い隠すかのように。しかし、見えなくなっても太陽は輝く。生命の源として輝いている。

 仙貴はそう思いながら、夕陽を見続けた。そして、由起子もその横で見つめていた。そうしている瞬間が、仙貴には、何にも替えがたい時間に思えた。

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グリーンスクール - 瞬きもせず 辻澤 あきら @AkiLaTsuJi

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