第20話 瞬きもせず-20
* * *
夕暮れが早くなった。芝生に水を撒きながら、由理子はそう思った。色褪せつつある芝生も季節のうつろいを感じさせてくれる。水のむせ返るような香りもなくなった。しぶきも冷たく感じられる。季節の流れが急に早くなった。
「由理子さん」
呼ばれた声に気づいて、水撒きを止めて振り返った。そこには、朝夢見と、朝夢見に抱えられてしなだれかかるようなしのぶが立っていた。
「ちょっと、いい?」
「うん。どうしたの?」
朝夢見はしのぶをテラスのイスに座らせると、ゆっくりと自分も座った。しのぶは、何か思い詰めたような顔をしてうなだれている。どうしたのだろうと思いながら、由理子も座った。
「あのね、相談にのって欲しいんだけど」
「いいけど…なに?」
「しのぶちゃんがね」
そう言いながら朝夢見はしのぶを見た。しのぶは、じっとしたままうなだれている。朝夢見はためらいながら、少しずつ話した。
「しのぶちゃん、仙貴のこと好きなの」
「あぁ」この間もそんなことを聞いたと思いながら相槌を打った。「そうなの」
「それでね、しのぶちゃんが……」
朝夢見の視線に合わせて、由理子も視線をしのぶに向けた。
「どうしたの、しのぶちゃん?」
しのぶはうなだれたまま何も言わない。じっと身を硬くして黙っている。悲壮な印象すら漂っている。
「あのね」朝夢見が話し出した。「しのぶちゃんに、相談されたんだけど…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます