インターミッション 第5話 - サウスポー

 次の球を投じるときには、直樹コールが起こっていた。しかし、朝夢見は一切気にしていないかのように、剛速球をインハイに投げてきた。

 直樹はそれを腕をたたんでうまく捌いた。打球音が響いた瞬間、大きく歓声が上がったが、ボールは三塁線を大きく外れファールになった。

 中川のシャッター音が響いたように朝夢見には思えた。

 歓声が落胆の声に変ったときには新しいボールは高松から未来に手渡されていた。未来が催促していたのだった。


 カウントは1-2になった。

「次が勝負球かな」仙貴

「でも、直樹君は結構対応してきてるわね。もう一球外してもいいかもね」由起子

「でも…2打席凡退に取ってるんだし、次が勝負でもいいんじゃないの」しのぶ

「甘いわね」そう言った由起子の顔には厳しい表情が見て取れた。

「2打席凡退でも、3打席目にホームランを打たれて逆転負けになることもあるのよ。そう考えれば、仕留められるときにはきっちり仕留めないと」由起子

しのぶは頷いていたが、でも直樹さんがそんなに簡単に打ち取れるんだろうかと思った。

「由起子先生ならどう仕留める?」仙貴

「あたしなら、アウトコース高めに速球を投げるわ。ボールになってもいいから」

「アウトローじゃなく?」仙貴

「そう」由起子はそう言うとにっこりと笑んだ。

「どうして?」仙貴

「今のインハイの後ならアウトローが定石なのよね。そのくらいは直樹君もわかってるわ。だからこそアウトハイにボールを投げれば、うまくいけば三振、もしくはポップフライ、ってとこね。もし見送られてボールになれば次の勝負球の選択肢が増えるし」由起子

「次は?」しのぶ

「次は、インハイへのファイアーボールもしくはインローへのフォークボール、ってとこかしら」由起子

「勝負球はインコースってすごいね」仙貴

「大丈夫よ、あゆみちゃんなら」由起子

そう言った由起子の顔は信頼している様子が見て取れた。

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