インターミッション 第4話 - サウスポー

「まさかフォークボールも持っているとはな」直樹

「2打数2三振ですよ」未来

「わかってる。まだ1打席残ってるさ」直樹

そう言いながらマウンド上の朝夢見をじっと見つめた。

 朝夢見は直樹をきっと見つめ返した。


 グラウンドの周りには人が集まっていた。直樹がグラウンドでバッティング練習をしている、しかも野球部相手ではなく、愛球会の女子部員相手に。それだけで充分話題になるのに、その女子部員に三振させられている、となると、なかなかのネタである。

 新聞部が到着したのは、最終打席が始まろうとしていたときであった。


「おい、どういう状況なんだ?!」中川

「よくわからないんで、インタビューをしてきます」坪井

「頼んだぞ!こっちは写真を撮っているから」中川

 手際よくカメラの準備をして写真を撮り出した中川に由理子が声を掛けた。

 名前を呼ばれた中川は、ファインダーから目を外して、由理子を認めた。そして明智に頼むとだけ言うと再び写真を撮り始めた。

 明智は由理子に会釈したあと、すいませんが状況を教えていただけないでしょうか、と言った。由理子は三島百合と一緒に説明を始めた。


 第3打席は騒然とした中で始まっていた。1球目は快速球であったが、アウトコースに外れた。というよりは、外したというところであろう。直樹は釣らされることなく、見送った。

 ボールが未来から朝夢見に返球された。朝夢見はゆっくりとボールを手に馴染ませながら、考えているようであった。

 未来は朝夢見が次のボールを悩んでいるんだろうと思い、タイムを取って朝夢見の方へ行った。

「あゆみちゃん、何でもいいよ。どんなボールでも受けてあげるから」未来

「ありがと」朝夢見

朝夢見はにっこりと笑うと、リラックスしたようであった。未来は親指を立てて軽くポーズを取ると、戻ってきた。

 直樹は戻ってきた未来に向かって、「作戦タイムってとこかな」と言った。

未来は、まぁね、とだけ言うと、マスクをかぶりしゃがみこんで、さぁいきましょうと言った。

 その言葉に応じるように高松がプレイ再開のコールを掛けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る