インターミッション 第3話 - サウスポー

 「あたしがなんだって?」

突然現れた由起子先生にしのぶは慌てて取り繕おうとしたが、仙貴が追い打ちをかけた。

「由起子先生が最強だって噂をしていたんだ」

しのぶが慌てているのに気づいてか気づかずか、由起子は、

「そう、あたしが最強なのよ」と冗談交じりにそう言った。


 「ところで、面白そうなことやってるわね」

由起子がグラウンドに目を向けながらそう言ったとき、次のボールが投じられた。


 そのボールは、ストレートと同じ球道をたどってきたが、スピードが遅く直樹は完全にタイミングを外してしまい、空振りをして一回転して転倒してしまった。

「チェンジアップか」

直樹はヘルメットを拾いながら呟いた。


 「あんなボールも持っていたんだね」仙貴

「そうね。でも握りを変えているだけで、投げ方は変わってないわ」由起子

「つまり、変化球と言うほどではない、ということだね」仙貴

「そうだけど……」由起子

「だけど?」仙貴

「タイミングを外すだけならいいんだけどね」由起子

しのぶはよくわからなかった。空振りをとれたんだから、いいじゃないかと思った。


 そんな中、第2球が投げられた。ノーワインドアップから再び剛速球が投じられた。直樹は平然と見逃した。


「どうしたのかしら?」しのぶ

「球道を見極めていたんだろう」仙貴

「そうね…。他の球種があるかも、と警戒したのかもね」由起子


 朝夢見は、ゆっくりとしたフォームで振りかぶると、ゆっくりとした腕のしなりから剛速球が飛んできた。

 直樹は、それを待っていたかのようにタイミングを見計らって振り出した。

 バットがボールに当たると思ったときには、ボールは地面の上で弾んでいた。それを未来がしっかりと受けたとき、直樹は空振りの遠心力で倒れていた。


「フォークボール?!」直樹・仙貴


「そうね、フォークボールだったわね」由起子

「すごい…」

 しのぶの台詞はその場の全ての人間の言葉を代弁していた。

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