インターミッション 第2話 - サウスポー
マウンド上にはアップが終わった朝夢見が、バッターボックスには直樹が、対峙していた。
高松がカウント0-1と告げた後で、プレイ!とコールした。再び朝夢見が振りかぶって2球目を投げた。またストレートだ!と直樹はフルスイングで応じた。ボールは1塁側ベンチの方へ、ちょうど池田が座っていたところへとライナーで飛んできた。
池田は慌てて逃げた。ボールは仙貴の近くの壁に当たり、跳ね返った。仙貴はしのぶを庇うかのように抱き寄せて、ボールをやり過ごした。
しのぶはドキリとしたが、仙貴が真剣に朝夢見と直樹の対戦を見つめているのを見て、変に意識した自分が恥ずかしくなった。
「速いね」
直樹がそう言うと、朝夢見は「そう?」とだけ言って新しいボールを受け取った。未来は「さすがですね」と直樹に言葉を掛けた。直樹は、ありがと、とは言ったが、表情は真剣そのものだった。
朝夢見がワインドアップで大きく振りかぶって投げてきた3球目は、インコース高めのファイアーボールというべき球だった。
直樹は腰を引かずぐっと踏み込んで全身を捩じるように腰を回転させてボールを打ちに行った。インハイの球はバットにかすることもなく未来のミットに収まった。
「ストラックアウト!」
高松のコールが響くと、くるっと1回転していた直樹が、
「やられちゃったね」と呟いた。
仙貴は感心していた。
「まさか3球勝負とはね」
「すごいね、あゆみさんは」しのぶが呟くと、仙貴は「さすがファントムレディ」と言った。
ファントムレディがどういうものかよくわかっていないしのぶは、訊いてみた。
「ね、ファントムレディって何?」
仙貴は俺もよく知らないんだけど、と前置きをした後で説明した。
「最強無敗の女」
仙貴の説明は要領を得なかった。
「運動能力を極限まで高めて、ファントムと言われる必殺ブローを繰り出す、最強の女」
しのぶはその説明を受けて、由起子先生を思い出した。
「そう言えば、由起子先生を怒らせるとすごく怖いわ」
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