第7話 瞬きもせず-7

きっと、由起子先生はわかってたんだろうな。この学校は、そんなことを許さない学校なんだって」

「ふふ。それは当たってる」

「あたしがファントム・レディでも、何も問題はないわ。由起子先生のおかげね」

「違うわよ」

「え?」

「由起子先生だけのおかげじゃないわ。もちろん由起子先生のせいもあるけど、もっと、そう、例えば、問題児が多すぎるとか、学校自体に問題があるとか」

「はは。そうかもね」

「結局、この学校は、大きいのよ。朝夢見ちゃんがファントム・レディでも、そのくらい簡単に受け入れて、それでまったく揺るがされることもない」

「それが、由起子先生の力なんだと、あたしは思ってる」

「うん。でも、他の先生も頑張ってる。あたし、そう思う。確かに、由起子先生が来てから事件も多くなったし、賑やかになったように思う。けど、由起子先生だけじゃない。どの先生も頑張ってる」

「うん。そうだね。そうじゃなきゃ、前の学校みたいに、ガタガタになるだけだろうから」

「いい学校よね」

「ほんと。ファントム・レディってこと忘れそう」

「忘れてもいいんじゃないの?」

「でも、やっぱり無理だ、あたしには」

「どうして?」

朝夢見は爽やかな笑顔を向けながら、静かに答えた。

「修羅場をくぐり抜けてきたから。修羅場を見てきてるから、普通の日常が、どこか嘘臭く思えてしまう」

「そう…」

由理子は言葉に詰まった。あまりに朝夢見があっさりと言い放ったから、よけいに何も言えなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る