第2話

 私は今、空を見上げている。青く、青いとしか言いようがないという意味では一切合切凡庸な空を見上げている。

 犬の背中の上で。


 切られた首を小脇に抱えた私が犬にされた最初のことは、餌を要求されることだった。もちろん、切られた首を小脇に抱えていない私が犬にされた最初のこともまた餌を要求されることであるのは明らかなことで、これはだから私の状態の如何によらず犬は行動するということを示唆するのみということになる。

 餌に満足した犬がひとつ吠える。なんだかよくわからないが、鼻をすぴすぴと鳴らしている。

 私は犬を捕まえ、犬の頭に顔をうずめようとする。正確に言えば、持った首を押し当てる。そして思い切り吸う。

 満足した私は、外出する準備を整える。気配を察知した犬はなんだか尻尾を振っている。

 散歩に連れて行くつもりではなくて、個人的な用事であったが、振り払うのにこまる。

 思案しつつドアを開け、無理やり振り払うしかないとなったとき、ふと手がゆるむ。

 滑り落ちる私の首を、床に衝突するところで犬が背面キャッチ。

 尻尾を振りふり、勝手に散歩へと参られる。

 そういうものだ。

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