失恋したので髪を切りに行ったら首を切られていた話
@prognorrhoea
第1話
失恋したので髪を切りに行ったら首を切られていた。
まあいいか、こんな生活も悪くない。そう考えられるようになったのは首を切られてから二週間ほどが過ぎた頃のことで、それまでは私の許可なく首を切った美容師を恨んだりもした。
もちろん、私の責もある。何も考えず美容師の言ったことにただ首を縦に振っていただけだからだ。切った首を小脇にかかえて街を闊歩するのが近年の流行であるなどとは知らなかった。
確かに美容室から帰宅するまで、やけに首切りスタイルの人が多く見えた。なぜ今まで気づいていなかったのだろう。
帰宅して洗面所で手を洗いながら、鏡を見やる。胴体の方の切断面に少しだけ残った首肉が気になる。
なんだかよくわからないが、変な感じがする。左右のバランスが悪いのだろうか。
私は部屋中をひっくり返してまわり、ずいぶんと前に自分で散髪をしていた頃に使っていたすきバサミを棚の深奥からようやっと取り出す。
再び鏡の前に立ち、胴体側切断面右側が余分に首肉があるように思われたので、少し切る。まだ変な感じがする。もう一声いく。今度は逆に切りすぎた気がする。
切ってしまった首は取り戻せないので、こうなると左側をもう少し調整することで取り戻すしかない。切る。
余計におかしい。左の調整でどうにかなる類のものでは、これはなかったようだ。
こうなってはもう終わりだと思う。そもそも美容師が切りすぎだったのだ。こうなるならあらかじめ美容師にあまり切りすぎない感じでと伝えておくべきだった。私はすべてを間違えた。
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