第49話
ハルシャの子供問題は、宮廷官の間で、どうするか相当揉めたらしい。
最初に懐妊した1人を正妻、残り2人を側室とすることは決まっていた。側室は今の時代に合わないので返そうとか、側室になった2人にはあまり表に出ない公務を中心に担当してもらおう、とか考えていたらしい。それも失礼な話だと思う。
跡継ぎ問題に悩んでいたというのに、一気に3人も産まれる。まだ性別はわからないが、3人一気に産まれてくるのだから、1人くらい男児もいそうな気がする。こればかりはわからないけれど。
予定日は早い順で、サクラさん、ヒビキさん、カエデさんということだが、サクラさんとヒビキさんの間は3日しかない。また、ヒビキさんとカエデさんの間は一週間。いくらでも覆る。
最初に産んだ人が正室だ、とか、男児を産んだ人に正室になってもらおうか、とか、いっそ三つ子ということにするか、など様々な意見が出た。
そんな話をする宮廷官の顔は明るい。どんな形にせよ、産まれるということは幸せなニュースなのだ。
一般には安定期に入り、3人ともの性別が分かってから発表する予定だ。ドキドキである。
こうなってくると俺の存在意義なくなるなー、気楽な立場になったなぁ。
「そんなことないですよ。ショウタさまにも公務はたっぷり入ってますし、醜聞は困ります。皇室の一員としての自覚をおもちになってくださいね。」
サヤさんが釘を刺してくる。そう言いながら渡してくれたのは、俺の恋人候補の調書だった。
見せてもらったが皆さん申し分ない。こんなに何も問題のない家というのもあるのだな、と逆に感心する。どの家庭にも困ったことの一つや二つあるだろう。俺の家だって母親が早くに亡くなってるし。親父は母親と駆け落ち同然だったみたいだしな。
シーファもハルシャのニュースに安堵していた。
「男の子がいたら、一先ずは安泰だものね。」
「わかんないぜ、俺とシーファの子がいたら、その子を皇帝にするために血で血を洗う闘いが勃発するかも。」
「何言ってるの。今21世紀よ。何世紀前の話をしてるの。」
「何が起こるかなんてわかんないよ。そういうリスクを減らすためにも、俺たちは結婚しない方がいいと思う。」
「そうね…。」
シーファは何かを考えるように遠くを見つめている。
「なんか、私、一周回ってショウタのことが好きなような気がしてきたのよね。」
「は?」
「こんなになんでも話せる人他にいないし。」
「おいおい。また何か拗らせてるのか?」
「ほら、そうやってからかってくるじゃない、年下のくせに。」
「年とかは関係ないだろ。イケメンがいいんじゃなかったの。」
「私もイケメンならいいのかと思ってたんだけどね、イケメンなだけじゃダメだったのよ。」
「え、マジで言ってる?」
「マジよ。だからとりあえず、結論を出す前に、一回デートしてみない?それでもしダメなら、すっぱり諦めるから。お願い!」
俺はここで断るべきだった。だが、シーファの真剣な表情に負け、一度だけ出掛けることになった。
後にとんでもないことになるとはつゆ知らず。
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