第48話
茶道で知り合ったミサキさんとはたまに食事を摂る仲だったりする。皇室の話は守秘義務等あるので何も話さないが、最近見た映画とか、自分の研究の話を聞いてもらうのだ。
フェンシングで知り合った元女子日本代表のカオルさん、パンジャーブ舞踊の先輩ミドリコさんともたまに食事をしたりする仲である。
3人ともいい人なので、結婚するなら3人のうちの誰かかな、と思っている。今はまだ一人に絞らずゆるゆると過ごすのが好きだが、時がきたら決断して告白しようと思っている。サヤさんに「気になっている方がいるなら調書取りますから早めに教えてください。」と言われている。リファの件以降厳しいのだ。調書…。一応依頼したが、俺が見てしまってもいいのだろうか。悩ましいが見てから考えるべきなのかもしれない。いつか話して謝ろう。
「ショウタ…!」
うーむ、と考えあぐねていたとき、バン!と部屋の扉が開いてハルシャが入ってきた。
「なんだよ、ノックくらいしろよ。」
「ショウタ…。」
「え?何?どうしたの?」
見るからに憔悴している。
「やられた…。」
夜這いか?誰だ?
「誰に何をやられたんだ。」
「3人に…。」
「3人とも?どういうこと?」
「襲われた…。」
およよ…と袖を咥えるハルシャ。
いやいや、一応、君が襲う側なんだけどねぇ。
よくよく話を聞いてみると、俺が想像していたよりもだいぶ面白いことになっていた。
3人の婚約者殿は、いつまで経っても手を出さないどころかアプローチすら何もしてこないハルシャに困りあぐねていた。
婚約者という名目で皇室にいるのだから、いつまでも何もないままではいけないだろうことはわかっている。まぁでも他にも2人いるのだし、誰かとはうまくいっているはず、と思っていたのがヒビキさんとカエデさん。2人は公務が楽しすぎて、公務をやれなくなるくらいなら妊娠してもいい、とかそういう気持ちだったとか、なかったとか。
そんなとき、サクラさんからこう言われたという。
「このままだとまた新しい婚約者候補が用意されて、私たちは追い出されてしまうのでは?」と。
それは困ると3人は相談した。
未来の夫の寝室も、みんなで行けば怖くない、と。
「寝ていたらノックの音がしたんだ。誰だろうと思って安易な気持ちで開けたんだ。婚約した当初は鍵とか掛けてたんだけど、もう4年くらい経つから油断してたんだ。
そしたら三人が酒とつまみを持って立ってたんだ。親睦を深めませんか、とかって。」
ハルシャは震えている。そんなに怖かったのか。
「酒に何か入ってたんだと思う。そうとしか思えない。気付いたら僕は全裸になっていて、女が上に乗ってて…。」
「どのくらい飲んだんだ?」
「2.3杯だよ。ウイスキーとワインだったと思う。ウイスキーのときはまだ記憶があるから、ワインが怪しい。」
「あれ、でも俺の聞いてた話では皆さん初めてだったのでは?」
調べたりはしていないそうだが、ハルシャの婚約者の条件の中に性行経験がない、というのはあったはずだ。初めてにしてその蛮行、おそるべし。
「たしかに初めてなのかもしれないがテクニックは怪物級だよ…。誰に教えられたんだか。」
すごいな。また一つ皇室の秘密を知った気分だ。
「そんな酒飲んで記憶もないなら普通は勃つもんも勃たないんじゃないの?」
「それが…。」
ハルシャは言い淀んだ。
ゴニョゴニョという言葉を繋げてみると、強壮剤のようなものが入っていたのか、恐ろしく長持ちだったらしい。
跡継ぎ問題は解決したかな。
どうやら話はそう簡単にはいかないようだった。
2ヶ月後、ハルシャの婚約者は3人とも妊娠していることが発覚していた。
めでたい。めでたいけど。笑っちゃうよな。
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