第41話
シーファのことを考えると、俺と結婚しとくっていうのが一番理にかなっているのもわかる。
俺が養子に入り、ハルシャに婚約者がいっぱいできてもなお、シーファが女皇帝として立つ可能性は潰えていない。
政治家の人たちが決めるのだろうけれど、延ばし延ばし自分の任期には決めなくていいようにしているのが伝わってくる。
シーファが誰と結婚したとしても皇籍に残れるようにしたことや、俺を養子にしたこと、ハルシャに婚約者を3人作ったこと。これは大きな変化だが、次期皇帝の決定打ではない。
シーファが誰と結婚するのか。その相手は皇帝の夫として相応しいといえるのか。シーファは見定められている。リファと同じ過ちをしないかどうか。
俺なら従兄弟という立場にはなるけど、養子なのはわかりきっているので身分的には問題ないのだ。年齢的には大アリだけど。
そんな折、通い始めた大学で、初めて圧力をかけられた、と感じる出来事があった。
「少し話したいので私の部屋に来てくれんか。」
一般教養の科目で日本史を教えているサトナカ教授だ。
「変なことはしないから、大丈夫。下がっていたまえ。」
とSPをも部屋から出してしまう。
ナカイさんは明らかにイライラしていたが、
「ドアの前におりますので。」
と名残惜しげに出た。何かあれば蹴破って来るだろう。いつ以来だろう、SPがいなくなるの。
「たまにはいいものだろう。監視されないのも。」
サトナカはふふふと笑った。
「シュウトクくんなんかよく私の部屋で休んでいったものだ。私はSPを追い出すのでね。君も羽を伸ばしたければ来るといい。いつでも歓迎しよう。」
「ああ、義父もここの大学の出身ですもんね。」
少し世間話をした後、彼は本題に入ってきた。
「さて。君はどう思っているのかな、皇室の、パンジャーブの未来を。」
彼は先代の皇帝と親交があったらしい。現皇帝もシュウトクやキョウカが通っていた頃にも助教としてよく世話をしていたそうだ。
「昔の皇室には威厳があった。誰もおいそれと近寄れない雰囲気。でも近寄ってくる者たちとは打ち解けて。敵を作らず、みんなと仲良くしていた。だが、リファは国民を裏切った。同じようなものが二度と出てはいけない。そうは思わないか。」
「うーん、どうなんですかね。」
「私は幻滅したよ。リファよりも、リファをどうにもできなかった周りや皇帝やシュウトクにね。」
そういう人は多かったと聞いた。シュウトクや皇帝、前皇帝の周りから付き合いの長い友人が何人も去った、と。
この人もそう思ったうちの一人なのだろう。
「君がシーファさまと結婚するのが一番いいとは思わないかね。」
「俺はまだ結婚とか考えたことがなくて…。」
「もう皇室は婚姻のことで失敗してはならない。シーファがとんでもない馬の骨を選んだらと思うと。」
「サイファはちゃんといい人を見つけてましたよね。シーファもきっと大丈夫です。もう少しシーファを信頼なさってはどうですか?」
「ってことがあってさ。」
シーファに教授の話をしたら、なぜかわからないが感動していた。
「ショウタくん、私のことそんなに信頼してくれてたんだね。」
「俺も自分で言ってびっくりしたけどね。そんなこと思ってたんだって。」
「私今まで恋愛とかとは無縁で好きな人がいたこともないし、見る目とか全然ないと思うよ。申し訳ないけど信頼できないんだよ。」
シーファははぁ、とため息をつく。
「イケメンは好きなの。ハンリュースターのカンタムの顔が一番かっこいいとは思う。でもカンタムと結婚したいわけじゃない。愛でるだけでいい。」
「そうだったんだね。」
アイドルオタだったのか。知らなかった。
「カンタムのグッズに囲まれてれば結婚とか別にしなくても全然いいと思ってるんだけど、立場上そうもいかないでしょ。」
後で調べたら、カンタムはカンタムリンという隣国ハンリューのアイドルだった。イケメンかどうかは俺には判断できない。わりとその辺にいそうな顔だとは思った。
「カンタムを好きでいてもいいよって言ってくれる心の広い男性で、家柄とか仕事とか諸々の条件が合う、私と結婚できそうな人っているのかなぁ。」
どこかにはいると思うが、そうそう見つかるものでもなさそうだ。、
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