第40話
つつがなく受験が終わった。
俺は第一志望には落ち、滑り止めで受けたG大の理工学部生になった。良かったのか、悪かったのか。警備の人たちは喜んでいる。シーファも喜んでたから、まぁいいのかな。TK大落ちたことも記事にはなって、パンジャーブ中に知れ渡ることにはなったけど。親父は仕方ないさと笑っていた。受かったんだからいいじゃないか、と。
リンは第一希望だったS大の国際環境学部。
ケンショウは第8希望くらいの私大の医学部。少し遠いけど、と笑った。リンとの付き合いは続けたかったそうなので、遠すぎる大学は嫌だったのだ、と言っていた。お幸せなことで。
ジングウジくんもT大に合格した。さすがだ。
ハルシャと婚約者さんたちとの距離はどうなったのだろう。全く関与してないけれど、懐妊したという情報は出ていない。
ハルシャは26歳になったし、俺は18歳。大学入学とともに、学業に支障がない範囲で公務に参加することになる。いよいよ、という感じだ。
国立の二次試験が終わると、ハルシャやシーファ、サヤさん、ゴンダさんなどが一気にやってきて、これからのことやこれまでの話をしていった。
「受験生って本当に気を遣うわよね。」
皆一様に祝いの言葉を述べると好き勝手話し始める。やれやれ、といった風にため息をついたのはシーファだ。
「そんなに気を遣ってくれなくても良かったけど。」
ここ一年、俺はまるで腫れ物のように扱われていた。挨拶くらいしか話しかけられないし、食事もだいたい一人。たまにシュウトクやキョウカが進捗を聞きにきたくらい。
「受験生っていつもこんなかんじの扱いなの?」
「そうよ。勉強に集中してもらわないといけないし。」
逆にめんどくさそうだからあまり触れなかった俺も悪いかもしれないけど、皇室のこういうところは異常だ。
「まぁ、たしかに集中はできたけど。」
「私、一年間考えてみたの。」
ん?
「誰と結婚するのがいいのかってこと。」
シーファは28歳のはずだ。なぜ結婚適齢期とも言える大事な一年間をそんなしょうもないことを考えるだけのために費やしてしまったのだろう。
「はぁ。」
俺はため息を相槌っぽく出した。
「やっぱり、ショウタがいいんじゃないかなって。」
「いや、俺はまだ18なんで。」
「結婚できる年齢じゃない。その方が後ろ盾もできてお互いに」
「シーファさん、好きな人とかいないんですか?」
俺は耐えきれずにシーファの話を遮った。
「恋とか考えたことがなくて。」
「じゃあまずいろんな人と会って、好きになれる人を探してみるっていうのはどうですか?」
そう叫んだ俺の顔は完全に苦笑いだった。
「よう!」
ハルシャは元気そうだった。
「子作りの方はどうなの?」
「いきなりその話かよ!」
「そこが一番気になるでしょ。」
ハルシャは頭をポリポリとかいた。
「なんか、あんまりみんな僕のこと好きっぽくなくて、ちょっと拍子抜けしちゃってさ。」
どういう意味だ。
「僕と子供を作ってもいいっていう人ばっかりだと思っていたんだよね、むしろ、作らせてくださいってくるとか、ハーレムみたいなのを想像してたのよ。僕は。でもなんか、みんな僕より公務っていうか。」
人格者ばかりじゃないか。
「ハルシャから誘われるのを待ってるんじゃないの。」
「それなら、もうちょっとわかりやすくOKサインというか、好意みたいなのを示してもらわないと。」
何を言っているんだろう。
「婚約者になってる時点でそれは示してるんじゃないの?」
「そうか。そうだよな。そうかぁー。じゃあ三人とも僕に誘われるの待ちって感じなのかな?」
俺に聞かれてもわからんけど。
「種馬みたいなのは嫌なんじゃなかったの?」
「そりゃあ、夜な夜なかわるがわる夜這いをかけられたりするのかと思ってたから。」
それどんなエロゲ?
皇室にツッコミはいないのか?
なぜシーファもハルシャも一年間拗らせるの?
俺も笑っていられる立場じゃない。俺自身も公務と勉学を両立した上で、25歳くらいまでになんとかして相手を見つけないと、あーだこーだ言われるようになるのだ。
その前にシーファをなんとかしないといけないしな。
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