第39話

 このままではいけない。

 それだけはわかる。

 僕だって皇室を終わらせたいわけではない。

 せっかく兄弟ができたんだ。ショウタに任せればいいじゃないか、と俺の心の声が言っている。

 だが、ショウタはあくまでも保険である。ショウタも僕もそれはわかっている。

 僕に男の子が生まれなかった場合、の話で。

 僕に男の子が生まれることをパンジャーブ中の人間が望んでいる。

 だからこそ三人も婚約者が現れてうふふあははと追いかけてくるのだ。

 あの人たちは皇室に入ってもいいと思っていて、僕と結婚してもいいと思っている女達である。

 母上がいきなり連れてきた。何度か会わされて嫌ではないかしら?とか聞かれたけど、まさか全員と婚約することななるとは思わないじゃないか。

 婚約者候補で一人を選べばいいのかな、と思ってたけど。

 誰でもいいでーす、みたいな。

 そんな超つまらないギャルゲーみたいなのを望んでたんじゃないんだ。


 僕は人付き合いが苦手である。

 高校生のときにこっぴどく振られたので女も嫌いである。特に委員長タイプの黒髪ロングのおしとやかそうな女は未だに後ろ姿を見るだけで震える。おしとやかだと思ったら気が強かった時のショックといったらなかった。見る目がなかった僕が悪いし、委員長タイプの人はみんな優しくて何を言われても受け入れてくれると勘違いしていた僕に非がある。


 逃げてばかりいてもダメなことは分かっている。


 婚約者殿とは公務を一緒にすることがある。

 みんな当たり障りない感じで話しかけてきてくれる。

 僕はつっけんどんに返す。

 私は構いませんけど他の方にそのような態度は良くありませんよ、と言ってくるのがサクラ。

 あらあら、ハルシャさまったら、面白いお方、と言ってくるのがカエデ。

 冷ややかに引くのがヒビキ。

 変に優しくすると良くないと誰かに言われているのか、あまり表立って忖度した態度をとってこない。

 その方がいい。その方がいいんだけど。

 こいつら、本当に僕と結婚する気あるのかな?




 ハルシャ様に気に入られるのは至難の業。

 シーファ様とショウタ様と一緒にお話しした時に、私は悟った。

 なんだこのかまってちゃん。本当に25歳?

 おもてなしの心構えを何も分かっていない。これが次期皇帝か。

 未来を少し憂う。

 昔はただの純心な子供だったけどなぁ。

 ハルシャ様はよく私の父が経営する旅館に遊びにきていた。私は基本的に遠くから眺めていただけだけど。

 あの頃の純心はどこへやら。

 でも、だからこそ私がいる。日本の伝統文化を廃れさせない。子供がどうとかゴンダさんからは言われたけど、そこは他の二人に任せます。

 私は国母として、パンジャーブ文化を救えればそれでいい。

                   ヒビキ



 様々な国で様々な人を見てきた。

 ハルシャ様はわりと自分本位タイプ。王族にこういう人がいたって別にいいと思う。現代的で。

 問題は後継者が一人しかいないことだ。何人かいて、そのうちの一人がこんな感じっていうなら何も問題ないの。でも正当な後継者は一人しかいない中でのこれはまずい。

 変なことに関わっちゃったなぁ。と少し反省する。

 でもいいの。面白いことが一番。海外はめちゃくちゃ行った。めちゃくちゃ見てきた。今度は違う立場から見てみたいと思った。その私の感覚に従うだけ。

 でもこんなにオクテだとは思ってなかったなぁ。

 みんな好きに生きるのが一番。一度しかない人生なんだからさ。

                   カエデ



 家族で行ったスーナ旅行で、別邸にお邪魔してよく遊んだ。

 未来の皇帝というのは周りの大人からよく聞いていて、なんとなく未来の皇帝の友達がいたらいいなと思って積極的に遊んだ。

 普通に楽しかったけど、ちょっと鈍臭かったから大人が見てないところでいじめたりもしたっけ。

 ハルシャは全然覚えてないみたいでよかった。というか、たぶん、私があの時の女の子だと気づいてないと思う。

 父は政治家の重鎮。兄も議員。

 絶対に男児を産んでこい、と送り出された。

 なんとしても産まねばならない。ハラスメントにも程があるとは思うけど。

 他の二人もそう言われて来てるんだと思う。誰よりも先に、男児を産む。

 でも手こずってる。

 女っ気のカケラもない。綺麗に化粧しても全然興味もたない。

 ショウタくんとゲームの話してる時が一番楽しそう。何なの?高校生のまま止まっちゃってるみたい。普通じゃ無理そうだから、変化球?でいってみるかぁ。

                 サクラ

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