第37話
ハルシャと三人の婚約者との接触はかなり少なくなったようだが、婚約者の方々は皆さま楽しそうに過ごしている。
俺は受験勉強に取り組んでいた。そんな時、俺はゴンダさんに呼び出された。
「えー大変言いにくいのですがね。」
部屋に入るとシュウトクとキョウカもいたので、嫌な予感に背中がゾクっとなった。
「先日のお茶会の後からですね、ハルシャ様と婚約者様方の仲があまりよろしくないようで。」
「え、そ、そうなんですかね…。」
どうせSPから話は聞いているだろう。俺のせいだって言いたいのかな?いや、さすがにそんなこと俺のせいにされてもね。うん。
「正直に申し上げてとても弱っているのです。」
「え、ハルシャと婚約者さんたちがこんな感じになるかもってことは全く考えてなかったんですか?」
「うまくいかないかもしれないとは思っていたのですが、こんなに早くからとは…。」
「ハルシャには何としても子供をつくってもらわなければならないのだ。」
シュウトクが口を開いた。
「誰とでも子供作りたいわけじゃないでしょ、たぶん。」
「でも、あの子の卑屈な性格で好きな人と結ばれるのを待っていたら、いつになるやらというか、困ったことになってしまうと思ったのよ。」
キョウカも口を開く。
「確かに強行策なのは認めるけれど、今ハルシャは25歳。今後のことを考えると、遅いくらいよ。」
この親達は間違ったことを言っていないのだが、「おまいう」というか、しっかり言わせていただけば、「おまえらがそれ言う?」と言いたくなることばかり言う気がする。
シュウトクとキョウカは恋愛結婚。しかも兄である現皇帝を差し置いて先に結婚した上に、大学を卒業する前にはもう籍を入れたんじゃなかったかな。
結果オーライではあるが、好き放題やってきた二人なのだ。そんな人たちにカワムラさんはちょっと、とかこの人と子供を作りなさいね、みたいなことを言われても、と思ってしまうのではないか?
俺がハルシャなら思うけど。
「ハルシャ様が頑なになられている以上、婚約者様たちから働きかけていただいても逆効果。ショウタさま。ハルシャ様はショウタ様のことだけはお友達と思っているのです。何卒、お力添えを…。」
「いやぁ、俺はハルシャの気持ちも少しわかりますけどね。そんないきなり子供つくってなんて言われても、というか。何事にも順序とかあって。」
「それはその通りなのだが。」
「リファさんにはそれを厳しく指導されてたのをハルシャも見てたんだろうと思いますし、複雑な心境なのではないですか?」
「リファとハルシャでは立場が全く違います。」
「でも同じ姉弟ですよね。」
シュウトクとキョウカは黙ってしまった。
「私だって、子供達の幸せをいつも一番に考えているのです。」
キョウカが声を震わせて言う。
「リファもそうです。アマルカから帰ってきたときのリファはそれはそれは鎮痛な面持ちでした。そうなると思ったから苦言を呈していたのに、とも思いましたが、そんなこととても言えませんでした。可愛い孫とともに抱きしめてあげることしか。」
キョウカにもいろいろあるだろうことは俺もわかる。
「リチャードさんとアマルカへ戻ってからは、時折テレビ通話で孫の顔を見せてくれるようになりました。以前は連絡しても何も帰っては来なかったのに。とてもホッとしているの。」
そうなのか。それはよかった。
「よかったですね。」
「ハルシャも幸せになってほしいのです。だから婚約者選びは私が良いと思う方たちを集めました。あの子は覚えていないかもしれないけど、婚約者の方たちとは幼い頃に仲良く遊んでいたのよ。」
「その話、もう少し詳しく聞かせてください。」
ハルシャと婚約者の方達は避暑地の別邸で遊んでいたらしい。
虫取りや渓流下りを一緒にしたことがあるとか、ないとか。
特にサクラさんとは仲が良く、一日中遊んでいたこともあるそうだ。おそらく、ハルシャは覚えていない。
婚約者の方達は皆覚えているそうだ。
ふーむ。話してみる価値は、あるか?
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