第34話

 そして、年が明け、新年の挨拶には皇帝、皇妃、シーファ、シュウトク、キョウカ、ハルシャが参加した。

 翌々日、新年の儀式等が終わった後、俺のお披露目会があった。

 俺はかなりの数のマスコミに囲まれ、皇帝とシュウトクに紹介された。ハルシャも来てくれている。

 俺はまだ学生なので、特に何も言う必要はないと言われていたが、学校のことや親元を離れることについて聞かれたので、当たり障りのないことを言っておいた。


 会見もひと段落し、よし、終わりだ、と思った時だった。


「続きまして、ハルシャ様のご婚約者候補を発表致します。」

 なんじゃそれ。

 俺は全く何も聞いていなかった。養子になることが決定してからこういうことが多すぎる気がする。親族に秘密にすべきじゃない。助け合っていかないといけないんだから。

 ハルシャはあまり驚いていないので、知っていた風ではあるが、苦虫を噛み潰したような顔をしている。

「左から、アヤノコウジ サクラさま、ヒノカワ カエデさま、マツハシ ヒビキさまです。」

 三人いる。

 サクラさんはハルシャと同い年の25歳。化粧品会社で働いている。淡い緑色のワンピースにオレンジの四角いピアス。奇抜なカラーだが上品な感じにまとまっている。髪型はハーフアップ。やや垂れ目でほんわかした雰囲気の顔つきだ。

 カエデさんはハルシャの一つ下の24歳。もうすぐ大学院を卒業するそうだ。人類史について研究しているらしい。ピンク色のワンピースで、オールアップにしている。キラキラした髪飾りがゴージャスだ。パリッと整えられていて、しっかり物といった雰囲気をまとっている。ホテルマンになれそう。

 ヒビキさんはハルシャの2つ上の27歳。紺色のシックなロングドレスで、艶やかな髪は肩の下でふんわりとしている。唇がくっきり赤い。そして乳がデカい。右目の下にはホクロがあり、エロさを増している。大人のお姉さんって感じ。こういう雰囲気の人がハルシャの婚約者というのは少し不思議だ。お茶の免許皆伝を所持していたり、花道、箏などが得意らしい。普段は祖母を手伝ってお茶の先生をしているそうだ。

「ハルシャのさまは三人の婚約者候補の方と距離を縮めていかれます。幸せを祈りましょう。」

 三人もお披露目する必要はあるのか?一人としか結婚しないだろ?

「それが、三人同時に行くらしいんだ。」

 帰る前に、堅苦しい服を着替えながらハルシャはため息をついて言った。

「できちゃってもいいらしい。」

「え、マジ?」

「三人ともできちゃってもいい、みたいなこと言われたよ。俺だけ一夫多妻でもいいみたいな法律が作られたんだって。そりゃあ皇室の存続かかってるとはいえさ、なんか種馬にでもなった気分だよ。」

 皇族男子の結婚の儀式等は多々あるのだけれど、できちゃっててもできちゃってなくても大丈夫なようになっているらしい。ただ、できちゃった前例はここ100年くらいはないそうだ。

「ハルシャはあの3人と会ったことあるの?」

「一応、一回だけ会って、いいですかみたいなことは聞かれたよ。でも一回会っただけじゃなんにもわかんないよな、向こうも絶対ネコ被ってるし。」

 知らなかった。ちょっと教えて欲しかった。

「ショウタはショウタで緊張してただろ。」

 宮廷官にも止められてたんだ、とハルシャは言う。

「選ぶとしたら、俺は…誰にしようかなぁ。乳で選ぶとなると…。でもみんなちょっと年上すぎなんだよなぁ。」

「やるよ。」

 そう言ったハルシャは全くの真顔だった。

「ショウタも他人事じゃないよ。僕に起きることは未来のショウタにも起こりうるよ。」

「マジか。」

 それはちょっと、イイかも。なんてな。

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