第21話
しばらく、宮廷に行ったり皇族に会ったりすることはなかった。そうなると、俺の頭に浮かんでくるのはリンのことである。学校に行くとちらっと見かけるし、クラスメイトにも別れたのか?とニヤニヤ聞かれるし、嫌になってくる。しかも、俺が苛立っているところもSPが見ているのである。
溜まりかねた俺は、何でもいいからやることないですか、とサヤさんに尋ねていた。
「オトノキさんのことで今、宮廷官はてんてこまいで…。」
と渋ったが、
「そうおっしゃる方たち同士で仲良くやっていただけるなら。」
と、宮殿の離宮に案内してくれた。
いたのは、ジングウジくんと、シーファである。
「ど、どうかな、近況報告でも。」
シーファは言った。
「オトノキさんのことでマスコミがめんどくさくて困っていて、どこにも行けないなら教育とか進めてくれないかな、と思って。」
俺は言った。
「暇なのか?暇なら勉強をしたらどうだ?僕も君も来年度受験生だろ?」
ジングウジくんが言う。ぐうの音も出ない。
「いや、勉強ももちろんしてるけど。してるけども。ね。」
俺は誤魔化すのが下手だった。
「ジングウジくんはどうなの。」
「僕は生徒会の任期がもうすぐ終わりになるので、少し時間ができたから来たまでだ。」
「ああ、そうか。お疲れ様でした。」
「生徒会では何をしたの?私はやったことないから、知りたいな。」
シーファが尋ねる。
「環境のことを掘り下げて考える時間を作った。プラスチックなどのゴミを減らすことが本当に海洋汚染に繋がるのかを問い直して、本当のSDGsを実行するプロジェクトを考えたりした。」
やり手である。CO2削減はずっと言われているけど、10年前からあまり変わっていない。ガソリン車が減ったくらい。
「そもそも日本は分別をしっかりしてる方だろ?ゴミのポイ捨てとかがあるのも一部の地域だけ。真に、CO2を削減できるものは何かってことを生徒に問いかけて、企画発表をしてもらったんだ。企業のCEOとかも大勢見に来てなかなか意義のある文化祭になったよ。」
文化祭でそれをやったんだ。さすがである。
「どんな発表があったの?」
シーファは興味津々である。
「CO2を減らすという面で考えると、やはり原子力発電の導入は欠かせない、という発表や、日本は元来ECOを考えているから、日本にもともとある習慣を海外に輸出していく、という発表があったかな。」
「え、例えば?」
「ポイ捨てしないとか、分別をきちんとするとか、あとは落とし物を交番に届けて持ち主に返すとか、整理整頓とか。そういう文化をつくることがゴミ減量に繋がるって発表してたな。」
「それ、とってもおもしろいね。」
「シーファさんは、どうしてたんですか?」
たまりかねて俺は尋ねた。ジングウジくんばかりカッコいいんだもの。
「私?私は視覚障碍者の方たちの音楽発表会にオトノキさんと行ってきたよ。」
シーファの声が突然暗くなる。
「何かあったんですか?」
「ううん、オトノキさんのお手本になろうと思って、張り切って行ったんだけど。」
「けど?」
「完璧だったの。対応も、言葉選びも、姿勢とかも。それで感動したの!なのに…。」
シーファは項垂れる。
「はぁ。私、やっぱりアサヒナさんと結婚するしかないのかなぁ…。」
ん?結婚?なんだ?時間が飛んだ?
話が飛躍しすぎてついていけない。何を言っているのだろう。
「それとも、2人のどっちかが私と結婚してくれる?」
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