第10話
「ショウタさんはいつもそんな風にお食事をなさるの?」
「ええ、牛丼とかのときは。」
「まぁ、面白いわね。」
「え?何が面白いんですか?」
「え?ああ、おかわりなんて、なかなかしませんから。おほほほ」
その後は、俺の努力(捨て身)のおかげかヤバすぎる空気は脱した。
その後のことはあまり覚えていないが、終始苦笑いで終わったと思う。
「何なんすか。」
帰りの車の中で、俺はサヤさんを問い詰めた。
「聞いてないですけど、まじで。」
「いやぁ…まさかこんなに早くこんなことになるとは…」
サヤさんは隣室にいたので全てわかっている。
「ハルシャさんていくつでしたっけ」
「22歳です。」
「俺より5こも年上じゃないっすか。」
「そうですよ?」
「そうですよ?じゃないっすよ。」
「なんて言ったらいいんですかね…。遅れてきた反抗期というか…」
「誰にでもあんなかんじ?」
「そうです。」
車を運転していたコンドウさんも頷く。
「昔はあんなんじゃなかったんですけどね。」
「昔?」
「コンドウはハルシャさま付きだったこともあるんです。」
サヤさんが説明する。
「小学6年生から高校3年生までね。」
それはかなり長い。ハルシャの全てを知っていると言ってもいいのではないだろうか。
「いろいろあったんだよ…。」
「いろいろ、じゃ困るんですけど。俺たぶん、今一番被害被ってるんですけど。教えてもらえないんすか?」
「いやぁ…。俺にも守秘義務がね…。」
はぁああああ?
「具体的な質問をしてくれ。聞かれたことには答えよう。」
手こずったがハルシャの姉が大いに関係しているらしいということがわかった。
ハルシャには姉が二人いて、仲が良かったそうなのだが、長女のリファは結婚する際にいろいろあったらしいのだ。
7.8年ほど前なので俺はまだ小学生だったので、正直あまり覚えていない。
そう言ったら「え!」という顔をされたが、それほど激震な事件だったのだろうか。
「当時10歳ですか…そうですか…。そんな子供に私たちは皇室問題に関わらせようとしてたんですね…。」
サヤさんは泣いている。
「知らなくて当然ですよね…。お話しますね…。」
ハルシャやリファの両親、シュウトクとキョウカは当時にしては珍しく恋愛結婚で結婚したらしい。しかも学生結婚。それでリアルシンデレラじゃないけどものすごく話題になったらしい。ハルシャやリファ、次女のサイファ、みんなそんなロマンスに憧れがあったらしい。
そして、時は来る。
長女のリファは大学で相手を見つけ、婚約目前までいった。しかし、そこで、男の家に金銭トラブルが発覚し、記事になってしまった。
社会情勢も相まって、リファの婚約は先延ばしになった。
しかし、相手の男はなぜか海外の大学へ留学。3年が経過する。さらに、就職も海外で決めてしまった。
リファに報告はしていたらしいが、金銭トラブルも進展がなく、本人もパンジャーブにいないとなると、決まるものも決まらない。
豪を煮やしたリファは皇室から籍を抜くと強引に海外で挙式し入籍したらしい。
持参金は普通に結婚する時程は出せず、式も皇帝は出席しないという異例なもの。
しかも、ずっと遠距離恋愛だった上にリファはプリンセス。夫婦生活もうまくは行かなかったようだった。
1年後、リファは母になるのだが、その顔は堀が深く凛々しく、金髪で、どう見てもパンジャーブ人のそれではなかった。
そんなリファの姿をハルシャは見たくなかったらしい。
惚れて惚れて惚れ抜いた相手と駆け落ち同然で結婚して、幸せになったと思っていたのに。
ハルシャは全てがどうでもよくなってしまったようだった、とコンドウさんは言った。
サイファも、リファの結婚後すぐに結婚して皇室を出た。こちらはリファの婚姻と違って正しい手順でアッサリ行われたそうだ。
ハルシャは一人きりになった。
「それで、あんなことに?」
「まぁ、それが、一番大きな問題かと。」
「え?他にもあるんですか?」
サヤさんは目を逸らした。
「本日はもう遅いですので、どうぞ、お休みください、ショウタさま。」
サヤさんは強引に話を切り上げてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます