第8話
合格した俺たちは、知らない宮廷官に案内されて別室へ通された。
ナカイさんも親父も体育館っぽい部屋で待機。本当に俺たちだけ。案内してくれた男の人もどこかへ行ってしまった。
気まずい。
アサヒナさんは誰もいなくなった途端スマホを触り始めた。誰かにメールしてるみたい。
「西海高校の生徒会長なんだよね!すごいね!」
俺は勇気を出してジングウジくんに話かけてみた。
「ああ…。」
なんだかそっけないな。
「僕はもう一人のスメラギが合格すると思ってたよ。マサトくん、だっけ。彼も生徒会をやっているんだよ。だから、生徒会活動で会ったことあるんだ。」
あれ?なんか失礼なこと言われてない?
「君のスピーチは全く響かなかったけど、マサトくんがあれだけ言うならそれなりの人物なのかもね。」
「ップフ」
オトノキさんが吹き出した。俺とジングウジくんはそちらを見る。
「ごめんごめん、ちょっと面白くて。」
オトノキさんは悪びれもなく言う。
「候補者同士仲良くしてくれると嬉しいよ。」
「よく言う。馴れ合ったって仕方ない。我々は蹴落とし合うもの同士なのだ。」
突然、アサヒナさんが入ってきた。
「一人しか選ばれないってことはもう決まってるんでしょうか。」
俺は勇気を出して聞いた。
「複数人ってこともあり得ると思ってたんですけど。」
アサヒナさんは鼻で笑った。
「そうだといいな。だとしても、君が選ばれることはないと思うけど。」
「ど、どうしてでしょうか。」
イラっとしたが、たしかに俺はなぜ落とされなかったのか不思議だとも思っていたので、そのまま聞いてみた。
アサヒナさんは肩をすくめただけだった。
合格した理由も知りたいが、落ちるとするならば何が原因なのかも知りたい。
「ねぇ、俺はなんで合格したんだと
思う?」と、アサヒナさんが答えてくれないので、ジングウジくんに聞いてみようとした時、ガチャリと扉が開いて選定官たちが入ってきた。
「立ってください。」
サヤさんが俺たちに言った。
全員が立つと、シュウトクが静かに入ってきた。
「皆さん、素晴らしいスピーチをどうもありがとうございました。」
シュウトクは口を開く。
「スピーチを聞いて、私はもっと君たちのことを知りたくなった。これから、少しずつ知り合っていきましょう。」
それだけ言うと、シュウトクは来た時と同じように静かに部屋を去った。
「ゴホン。」
咳払いをしたのは50代くらいの年配の選定官だ。
「選定官の代表兼、宮廷官副長を務めております、ゴンダです。」
見たこともないような美しい一礼。慌てて俺も礼をした。
「今後の話をします。どうぞ掛けてください。」
これから、俺たちは御養子候補としての教育が始まっていくそうだ。まだ決定ではないので、今やっている仕事や学業は続けて、並行して御養子教育は行われる。
選定官はマネージャー業務をこなせるそうで、空いている時間帯に御養子教育を入れていく。複数人の候補者の都合が合えば、合同で行う場合もある。
ゴンダさんはつらつらと言った。
「御養子教育の中には、シュウトク殿下やハルシャさま、その他の皇族の方と会ったり、食事をしたりすることになる場合もあるでしょう。その際に話した内容など、SNSなどに絶対に載せないでください。」
俺たちの前に紙とペンが配られた。
「そちらは守秘義務を守りますという宣誓書です。皇族の方の話は、おいそれと一般の方々の耳に入れるべき話ではありませんので。」
ゴンダさんはそう言った。
「それは、家族にも?」
「ええ。ご家族にも。ご友人にも。」
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