第4話 参加者たちの自己PR1
「それでは、参加者の皆さんから一言ずつ今回の意気込みを語ってもらいます! ではまずはエントリーNo.1、夏香ちゃんのお母さんの野々宮里美さんからお願いします!」
早希から指名を受けた里美は緊張した面持ちで話し出した。
「今回は初めてお母さんオーディションに参加させて頂きました。参加するからには、他の参加者の方の胸を借りるつもりで優勝を目指して頑張りたいと思います。そして、優勝できた暁には明日から晩御飯に出す白ご飯をどんぶり山盛りの量に増やそうと思います!」
「成長期の男の子じゃないんだから、そんないっぱい食べないから! むしろ今ちょっと体重気にしてご飯減らしてるくらいなのに!」
なぜ絶対的有利な状況から自ら不利になるようなことを言ってしまうのかと夏香は文句の一つでも言いたくなる。
あと、胸を借りるという表現は優勝確実な人が使うべき言葉ではない。
「では続きまして、エントリーNo.2、夏香ちゃんのお父さんの野々宮聡一さんです!」
早希に名前を呼ばれて、聡一が話し出す。
「えーっと、僕が夏香のお母さんになった暁には……ご飯の総量を今の2倍にします。里美は白ご飯だけ量を増やすみたいですが、僕はおかずも含めて全ての量を増やします!」
「別にご飯の多さを競わなくてもいいから! そこは加点ポイントどころかむしろマイナス要素だから!」
「続きましてエントリーNo.3、夏香ちゃんの愛犬のチョコちゃん、どうぞ!」
「ワンッワンワン! ワンワン!」
「まあそうなるでしょうね……」
必死に何かをアピールしてくれているのは嬉しいけど、犬なので、当然鳴き声でのアピールになってしまう。
「ワンワン! ワンワワン! あと、散歩は毎日連れて行ってくれたら助かるワン! ワンワン!」
「チョコちゃん、可愛らしいアピールありがとうございました! それでは続きまして――」
「待って、今結構ガッツリ日本語話してなかった?」
何事もなかったかのように司会進行をしている早希の言葉を遮った。変な事ばかり起きているので今更大抵のことには驚かないが、さすがに愛犬が喋り出したとなると夏香もスルーできなかった。
「夏香ちゃん、今大事なイベント中なんだから横槍入れたらダメだよ?」
「よく平然とスルー出来るわね……」
もしかしたら異様な事態が起き過ぎた結果自分にだけ聞こえてきた幻聴なのかもしれない、と夏香は思うことにした。もうなんだか考えるのも面倒くさい。
異様な状況下に置かれた結果生じたストレスのせいである、と夏香は結論付けた。
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