第2話 参加者たちの自己紹介1
「では、いきますよー、エントリーNo.1、夏香ちゃんのお母さんこと野々宮里美さんです!」
早希の宣言とともに、一番左にあった試着室風のスペースのカーテンが勢いよく開く。中から出て来たのは紛れもなく野々宮夏香の実母、野々宮里美だった。
「え、ちょっとお母さん、何やってんの?! お母さんオーディションに本物のお母さんが出たらもう不戦勝みたいなもんじゃないの?」
野々宮里美は夏香と早希に呑気に手を振っている。
「夏香ちゃん、コメントをお願いします!」
そう言って早希が夏香にマイクを向ける。
「いや、コメントも何も、もう本物のお母さんが出てきたら優勝決定じゃん。この後誰が来てもお母さん以外の人選ばないよ、私」
「さあ、気を取り直してNo.2行ってみましょう!」
コメントしろと話を振ってきたにも関わらず気を取り直されてしまい、夏香はなんとなく納得がいかず不満気な表情を浮かべた。
「エントリーNo.2、夏香ちゃんのお父さんです!」
今度は勢いよく開いたカーテンから夏香の実の父親である、野々宮聡一が出てくる。
「ちょっとお父さんまで、夫婦で何やってんのよ! ていうかお母さんオーディションにお父さんが出てきたらややこしくなるからやめてよ! 野々宮夏香の父親の肩書で満足してよね!」
突然でてきた父親の姿に困惑して、夏香が語気を荒げた。
「では、どんどん行きますよ! 次はエントリーNo.3夏香ちゃんの愛犬チョコちゃんです!」
開いたカーテンからは野々宮家で飼っている茶色い毛色をしたトイプードルのチョコが出てくる。一応紐で繋がれてはいるが、元気いっぱいに動き回っていて、何かのはずみで紐が外れたらそのまま逃げ去ってしまいそうな勢いである。
「いや、なんでチョコまで参加させられてんのよ……ていうかこのオーディションめちゃくちゃ内輪の企画じゃないの……今のところ、ただの野々宮家の家族紹介よ?」
これで今一緒の家に住んでいるメンバーは全員出てきてしまったが、ブースはまだ2つも残っている。夏香は誰が出てくるのか不安の面持ちで、4番のブースを見守っていた。
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