第5話 深夜の来訪者
ここ一ヵ月程、よく深夜に目が覚めるんです。仕事で身体はヘトヘトにもかかわらずです。何かの病気かと思い専門医にかかったのですが、ストレスによるものだと診断されました。確かに、仕事で失敗が続き、上司に目をつけられ些細なことでも怒鳴られる毎日です。ストレスが溜まらないはずがありません。そのストレスから解放されたくて、良からぬ思考に至ることもありました。しかし、そんなことをする勇気もなく、重い足取りで通勤する日々です。
昨日も例に漏れず上司に小一時間ほど怒鳴られ、意気消沈して帰宅しました。違ったところと言えば、帰りに珍しくお酒を買ったことぐらいです。憂さ晴らしに飲酒をするというのは、よく聞く話ですが私自身アルコール耐性がないので、すぐに潰れてしまうのが目に見えています。どうにでもなれと自暴自棄になりつつ、ゴクゴクと飲み干しました。案の定、缶ビール2本目を飲んでいる辺りから記憶がありません。いつの間にか寝ていた私が目を覚ましたのは、やはり深夜です。時間はたしか2時過ぎだったと記憶しています。やはり目が覚めたと落胆するも、再び眠りにつこうと目を閉じるのですが、尿意が邪魔をしてうまく寝付けませんでした。仕方なく私は眠気まなこのまま、明かりも点けずにトイレに向かいます。その最中のことです。不意に外からコツコツコツと足音が聞こえてきました。こんな時間に誰が歩いているんだと気になりつつも、私には睡眠が最優先でした。用を済ませ、手を洗う中でも足音はなっています。そして、トイレから出て、不意に隣接する玄関のすりガラスを見ると、そこには外の街灯に照らされて女性が立っているんです。コンコンと鳴る戸。こんな時間にお客が来るはずがありません。それが人ならざる者だとすぐに分かりました。逃げたい心境とは他所に、身体を動かすことができません。尚も戸を鳴らし続けます。しばらくして、ようやく鳴り止んだと思った次の瞬間ーー
「お迎えに参りました」
そこで私の意識がなくなったんです。
次目を覚ますと朝で、母親が怪訝な面持ちで私を眺めていました。
「あんた、なんでこんなところで寝てるの?」
返す言葉もありませんでした。適当に誤魔化す私ですが、頭の中は昨晩のことでいっぱいです。結局、あれは何だったのでしょうか?
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