終わりのざまぁ編

第19話 ハンナがざまぁ

「盗賊団が横行しているから、気を付けて」


 お土産を渡したら、受付でミリーにそう言われた。


「もしかして、ボガード傭兵団が警護していた隊商とちゃう?」

「ええ、そうだけど」

「奴がまた同じ事してるんや」


「奴って?」

「ボガードや。傭兵団のくせして盗賊と結託してるちゅう訳や」

「そんなのすぐにばれるだろう」

「それが奴の手口の巧妙なところで。奪われた品物を取り返して来るんや。盗賊の下っ端の亡骸と一緒にや」

「ああ、そのフォローの代金で儲けている訳か」


「うちのおとんはそれに気づいて、金を払うのを拒否したんや。ほんなら店への妨害が始まったちゅう訳や」

「許せんな。よし、傭兵団の妨害をしてやろう」


 今回使う保険はこれ。


――――――――――――――――――――

 物品盗難取り返し保険

  品物が盗難されると手元に戻ってきます。


  保険料:金貨1枚

  保険タイプ:掛け捨て

  保険対象:馬車一台

  保障期間:一ヶ月

  払い戻し:テレポート魔法

――――――――――――――――――――


 問題はどうやって、保険を商人に加入させるかだ。

 損して得取れだな。


 今回もお守りで行く。

 マグナ教のお守りをただで上げますと言って、初回サーピースする。

 そして効果を実感したら、がっぽり頂く訳だ。


「商人を商会してくれたら、後で保険に入った場合、マージンをやるけどどうする?」


 ミリーに保険の説明をしてどうするか聞いた。


「やるやる」

「よし決まりだな」


 商人の馬車行にミリーと行った。

 不審そうな顔の商人。


「マグナ教のお守りです。お代は要りません。サービスです」

「悪いね」

「いえ、信者としては布教活動は当然の事です」


 と言って、馬車に保険を掛けた。

 別に俺は信者でも何でもない。

 だが、長い物には巻かれろだ。


 傭兵団が関係している馬車の数はそれほど多くない。

 金貨20枚の出費でなんとかなった。


 そして。

 続々と盗賊に盗られた品物が帰ってきたと報告があった。

 ボガードはというと、下っ端かどうか分からない亡骸を持ってきて、アジトは潰したと報告してきたらしい。


 奴はかなり、じれているはずだ。

 たぶん契約した馬車なら疑いもせずに襲うだろう。


 奴がお守りのからくりに気づく前に、俺達とミリーは馬車の後をつけた。


 襲撃の現場に遭遇。

 酷いな。

 まず、商人を逃がすと、盗賊が冒険者と交戦。

 傭兵団は戦うふりをしている。

 冒険者には逃げるように言ってあった。

 冒険者が逃げて居なくなると、傭兵団は盗賊のアジトに品物を運ぶのを手伝い始めた。

 馬鹿な奴らだ。


 裁判でも使われている魔写の魔道具で、撮られているとも気づかないで。

 俺達は街に帰り、ボガードを告発。


 逮捕の瞬間に付き添う事にした。


「ボガード、証拠は挙がっている。大人しく縛につけ」

「誰が捕まるかよ」


「ハンナ、やってしまえ」

「ほな、いくで」


 ハンナの堆肥箱が炸裂。

 ボガードが捕まった。


「ボガードは堆肥箱から抜け出すほど強くないのか」

「せやな。悪だくみが上手いだけやわ」


 拘置所に行きボガードを出す。


「かゆい。足が痒い。頭もだ。おまけにあそこもだ」

「はははっ、水虫菌が培養されたな」

「ふふっ、ちょっとうちの溜飲が下がったわ」


 商品のお守りはあれから大流行。

 マグナ教にもお布施をし、司教から感謝状が届いた。

 商品のお守りで儲けた金はハンナの両親の借金返済に充てた。


「こないな事してくれんでも」

「今回の件はハンナがいなければ、首を突っ込もうとは思っていなかった。仲間の復讐の手伝いになりさえすれば、商品のお守りは儲からなくても良かったんだ」

「無欲の勝利やな」


 俺の耳に噂が飛び込んできた。

 回復の保険の偽物が出たと。

 出るかもとは思っていたが、出るとはな。

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