第10話 俺ってやっちゃった?
「お姉さん、エール三丁とオークのから揚げとサラダね」
「はいよ」
ギルドの併設の酒場で打ち上げだ。
「パーティの結成を祝して乾杯」
「乾杯」
「乾杯してすみません」
ターラが飲みほしたジョッキをテーブルに置いた途端。
陶器のジョッキが粉々に砕ける。
「借金に付けとくぞ」
「もう嫌。スキルのオンオフが何でできないのよ」
何でって言われても知らんがな。
なんか使えそうな保険はあるかな。
物品の保険で人対象の奴。
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スキル損害保険ロング
スキルで損害が出た場合に魔法で補填します。
期間中は何度でも払い戻しを受け取れます。
保険料:金貨100枚
保険タイプ:掛け捨て
保険対象:一人のスキル行為
保障期間:一年
払い戻し:損害に応じて何度でも
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あったけどこれは駄目だな。
持っている金では足りない。
今、手持ちは金貨50枚ぐらいだ。
かといって一回きりの保険をチマチマ掛けるのはな。
おっ、これなんかどうだ。
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雑貨家具リペア保険ロング
対象の人物所有の雑貨家具が壊れた場合。
リペア魔法が何度も掛かります。
保険料:金貨10枚
保険タイプ:掛け捨て
保険対象:一人の雑貨家具全て
保障期間:一年
払い戻し:何度でもリペア魔法
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人に対して掛かるし持ち物の全部を保証してくれる。
掛けてやろう。
「ターラ、一年間自分の持ち物限定でリペアが掛かるようにした。感謝しろよ」
「ありがとサンキューな。お姉さんジョッキ売って」
「はいよ、空ジョッキ一丁」
「ところでシンディはエリナとどういう関係なんだ。先輩後輩は分かっているが。パーティを紹介するほどじゃないだろ。それも不良物件を」
「魔道具設計の天才ですみません。先輩に貸しを作ってしまってすみません」
「あー、読めたというか分かった。シンディがなんで魔法学園を卒業できたのかとか全て分かってしまった」
魔道具設計のみで学園を卒業したんだな。
その関連でエリナに貸しがあるのだろう。
今、エリナがやっている魔道具屋もシンディの設計した商品が並んでいるかもな。
なんで冒険者をやっているか分からないが、魔法威力爆上げは眠らせておくには惜しい才能だ。
「カケルさん、離しません」
シンディが抱きついてきた。
「がははは」
ターラは言うと笑いながらマイジョッキをバンバンテーブルに打ち付けて、壊すごとにリペアが掛かっている。
ターラに抱きしめられなくて良かった。
そうしたら大惨事だ。
「ちぇ、仲間外れにするなよ。私も」
「むぎゅー」
「狭くてすいません」
ターラに抱き着かれ俺達は意識を失った。
朝起きると、床には千切られた布が散乱していて、俺とシンディはすっぽんぽんだった。
もしかして、俺ってシンディを襲ってしまったのか。
三人で同じベットに寝ていて、ターラはジョッキを抱えて、ぐうすか寝ている。
「シンディ、起きろ」
俺はシンディを揺さぶった。
「きゃー、きゃ、きゃー。見ないで。見るな。玉を潰すぞ」
おっ、性格が変わったな。
かなりパニクっているな。
しばらくしてシンディはシーツを身に纏い落ち着いた。
「朝から貧相な物を見せて、すいません」
「いやいや、けっこうなお手前で」
白い裸身はセクシーだった。
ターラほどスタイルは良くないが、完全にストライクには入っている。
「そんな事より。俺達ってしちゃった」
「すいません、分かりません」
ターラを起こすしかないか。
服を買って来てもらわないといけないしな。
「ターラ、起きろ」
「はっ、もう一杯」
「状況を説明しろ」
「なんで二人とも裸なの。寝ている間にシンディの魔法が炸裂しちゃった?」
「そんな訳あるか。床に散らばった布を見ろ」
「思い出してきた。二人が酔いつぶれたから、ベッドに運んで。それから暑そうだったので、服を脱がそうとしたんだっけ」
「それから」
「服が上手く脱がせられなくて、キーってなって、千切った。そして寝た。以上」
「以上じゃない。俺達の服の代金も借金に付けとくからな」
金に余裕があれば服一枚ずつに保険を掛けるんだけどな。
雑貨と家具の保険があってなんで服の保険がないんだよ。
服は消耗品だからか。
でも地球では金持ちが作ったダイヤをちりばめた服とか保険に入っているはずだ。
差別だ。
文句言っても仕方ないから、ターラをスキル損害保険ロングに入れるまでは我慢しよう。
このパーティは良かったのか。
ラッキースケベの回数は多いが、俺って何回、死んだんだろうな。
復活出来るからまあいいか。
やばい、死ぬこと前提になっている。
駄目だ、死なないように頑張ろう。
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